船の絶滅危惧種「ホーバークラフト」。大分で16年ぶりに復活する理由とは?現在、定期運航されているのは世界で1カ所のみの“爆音”珍乗り物!
一方で、イギリス・ポーツマス~ワイト島間は架橋がなく、極端な遠浅(水深が浅い砂浜)が続く地形の関係上、水面に接しないホーバークラフトのほうが内陸近くに到達できる。世界で1カ所だけ「ホーバークラフト運航」を継続できたのは、奇跡的に「ホーバー向け」だった地理条件のおかげと言えるだろう。 ただし軍用や災害救助用途のホーバークラフトは、「エアクッション型揚陸艇(LCAC)」として、アメリカなど世界各地で現役だ。日本でも、2024年1月1日に発生した能登半島沖地震で道路が寸断された奥能登の砂浜に上陸、復旧用の重機を送り込むなどの活躍を見せている。
津波が発生すると海中には流木などが漂い、プロペラで進む船だと浮遊物を巻き込んでしまう。海面から浮いて砂浜に上陸できるホーバークラフトは、災害が多発する日本では今後とも必要とされるだろう。 現状では、ホーバークラフトの立ち位置は「旅客船としては難あり、災害救助には出番あり」といったところだろうか。ただ、定期就航の準備が進む大分のホーバークラフトは、こういった問題がある程度は解決されているようだ。 後編『16年ぶり航路復活「ホーバークラフト」進化の実態』では、新しいホーバークラフトがどう進化したか、また残された課題について検証する。
宮武 和多哉 :ライター