災難続くムーディ勝山に起きていた“葛飾の奇跡”──生き別れの父と30年ぶりの再会
あれから2年。 「もう一歩踏み出す勇気はまだ……」といまだ父と連絡を取るには至っていない。いろいろ、複雑である。 ちなみにムーディ、この一連の出来事を、「かつしかFM」の自身の番組、しかも、オープニングトークでしゃべっただけだという。 「ちょっとアップテンポの軽快なBGMに乗せて……」 と笑うが、オリンピックの金メダルでスクラッチカードを削るような、“もったいなさ”は否めない。 実際、その気になれば、お涙頂戴もののテレビ番組で盛大に披露することもできただろう。しかし、彼はそうしなかった。 芸人が自身の体験を公の場で語るときの作法に、“ネタにする代わりに全部チャラ”というのがある。つまりは、ノーサイド。ふと思うのだ。もしかすると、ムーディにとっては、このコミュニティーラジオでしゃべることにこそ、意味があったのかもしれぬと。何しろ、リスナーは葛飾の住人のみ。その中には当然……いや、考えすぎかもしれぬが。 * * * 既に、父と暮らした時間より、父として過ごした時間のほうが長くなったムーディ。現在息子は7歳(小1)、娘は今年4歳になった。 最近では、無類の漫画好きを生かしてコラムを連載するなど、文筆業にも進出。再び、積み上げ始めている。この男の前では、さしものコロナ禍も“右から左”……結局、“受け流して”しまうに違いない。
--- ムーディ勝山 1980年6月11日生まれ。滋賀県出身。最近はnoteやInstagramの投稿が人気を博すなど、幅広くネタを創作。ヤンマガWebで「1日漫画評録ムーディ」、ふたまん+で漫画コラムも執筆している。 --- 山田ルイ53世 お笑いコンビ・髭男爵のツッコミ担当。「新潮45」で連載した「一発屋芸人列伝」が、「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞を受賞。この冬には文庫化された。主な著書に『ヒキコモリ漂流記完全版』(角川文庫)、『一発屋芸人の不本意な日常』(朝日新聞出版)、『パパが貴族』(双葉社)がある。