JALの損失「150億円」から考えるキャッシュフローの仕組み。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■キャッシュフロー計算書がややこしい理由。
最後は三月末決算の企業なら四月一日の期首の時点で保有する現金に、三つのCFの変化を加えて期末の時点で現金がいくら残っているのか計算する。すると一年間の増減・期首の残高・期末の残高と三つの数字が確定して、キャッシュフロー計算書が完成する。 計算方法を見れば分かるように、営業CFで利益から現金の動きが伴わない数字を取り除き、そこから投資に回して借金の返済や配当にも使えば、手元に残るお金は利益として表示される数字から大きく変化する。利益とキャッシュフローは全く異なる数字であることは納得して頂けたと思う。 キャッシュフロー計算書が難しい理由は三つのCFの関係が把握しにくいからと説明したが、もう一つの理由がPL(損益計算書)とBS(バランスシート)にまたがって計算を行うからだ。 日商簿記の資格では一級の出題範囲になるため正しく学ぼうとすれば難しい項目だが、最低限の仕組みを知っているだけでも読んだり分析したりは十分可能だ。もちろん興味のある人は日商簿記の資格取得をお勧めする。 筆者が日商簿記の資格を発行する商工会議所のインタビューを受けた際には、簿記の知識は一生使える、学生にも会社員にも役に立つ資格であるとコメントをした。これは決して大袈裟ではなく、FPとしてアドバイスをする際にも簿記の知識はフル活用している。 文中で触れたように経理ではなくても投資や就職・転職で決算書を読めないとそれだけで危険な状況に転落する可能性がある。 今回は特に難解なイメージを持たれるキャッシュフロー計算書を説明してみた。参考にしていただければと思う。 中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー シェアーズカフェ・オンライン編集長
【プロフィール 中嶋よしふみ】
2011年にFPのお店、シェアーズカフェを開業。保険を売らず有料相談を提供するFP。共働きの夫婦向けに住宅を中心として保険・投資・家計・年金までトータルでプライベートレッスンを提供中。「損得よりリスクと資金繰り」がモットー。東洋経済・プレジデント・日経DUAL等のメディアで連載、執筆。新聞/雑誌/テレビ/ラジオ等に出演・取材協力多数。2013年、士業・専門家が集うウェブメディア、シェアーズカフェ・オンラインを開設、翌年よりYahoo!ニュースに配信を開始。専門家向けに執筆指導も行う。著書に「住宅ローンのしあわせな借り方、返し方(日経BP)」「一生お金に困らない人 死ぬまでお金に困る人(大和書房)」。お金より料理が好きな79年生まれ。
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