JALの損失「150億円」から考えるキャッシュフローの仕組み。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■キャッシュフローは「実態」を正確に表す。
リーマンショック発生時、前年に過去最高益を出したにも関わらず手元資金が尽きて倒産してしまい、多数の学生を内定切りした企業があった。内定切りの時点ではまだ倒産しておらず、筆者が目にしたニュースでは、お願いだから入社させてほしいとカメラの前で泣きながら訴える学生の姿が流れていた。 一体何が起きたのかと思ってその会社の決算書を見ると、過去最高益をたたき出す一方で手元の現金は激減、そして過剰な仕入れが原因で多額の借金を抱えていた。こりゃすぐにでも潰れるに違いない、学生がキャッシュフロー計算書を読めないのは仕方ないにしても早く他の企業を探せとアドバイスをする人は居ないのか?と呆れてしまった。 内定切りが公表されたのは10月頃、そして2月には経営破綻と、結局その会社は入社式を迎える前に潰れてしまった。潰れる寸前だから内定切りをするんだよと誰か教えてあげる人はいなかったのか?ということになるが、これは利益よりもキャッシュフローの方が実態を表していた事例だ。 そんな話がJALの150億円の損失と何が関係あるのか?と突っ込まれそうだが、発生主義に関わる話だ。 株式投資をやっている人にはお馴染みの、PER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)といった指標がある。これは株価が利益や純資産の何倍か?を示す指標で、低ければ株価は割安、高ければ株価が割高と判断する。 そしてこれらの指標より有効とされるのが、PCFR(株価キャッシュフロー倍率)だ。利益や資産よりキャッシュフローに対して株価が何倍か?という指標の方が株価との相関が強いということだ。これもキャッシュフロー、現金の流れが企業の実態を正確に表している証拠とも言える。
■三つのキャッシュフロー。
発生主義はキャッシュフロー(以下CF)の仕組みと密接に関わっている。キャッシュフロー計算書は三つの項目に分かれる。営業CF、投資CF、財務CFの三つだ。 三つの項目、それぞれの内容と関係を説明すると以下のようになる。 「営業」で稼いだ現金を、店舗や工場など設備へ「投資」して、残ったお金で借金の返済を行って配当を出す、その逆に資金が足りない場合は借金や株の発行で資金を調達するなど「財務」で調整する。 営業で稼いだ現金は利益と重なる部分も多いため、営業CFは利益から計算する(後ほど説明)。 設備投資は工場や建物、土地、株などへの支払いを指す。一見すると営業CFに含まれそうな項目に見えるが、営業CFと投資CFは分けて計算をする。 財務で調整は、現金が足りなければ借金をする、あるいは株主から調達する。現金が余っていれば借金を返済する、あるいは株主に配当を支払う。 キャッシュフロー計算書が分かりにくい、難しいと思われてしまう原因はこの三つのCFの関係が分かりにくいからだ。逆に言えば三つの関係を把握すれば簡単に理解出来る。
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