JALの損失「150億円」から考えるキャッシュフローの仕組み。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■営業キャッシュフローは利益から計算する。
売上-費用=利益 利益の計算式は極めて単純だ(厳密には税引き後当期純利益)。100億の利益は100億の現金増加を意味しない、その理由は支払いや受け取りのタイミングにズレが生じるからと説明した。 つまり利益の計算に使う売上と費用には「現金の動きを伴わない数字」が含まれている。そうであれば営業CF=ビジネスで稼いだ現金を知るには、利益から現金の動きを伴わない数字を取り除けば良いだけ、ということだ。 利益に含まれる現金を伴わない数字は多数あるが、代表的なものは以下の4つだ。 減価償却 後払いの売上(売掛金・受取手形) 在庫の増減(棚卸資産) 後払いの支払(買掛金・支払手形) 100億円の利益は以下の数字から計算したと仮定する。 売上150億 費用50億 利益100億 100億円の利益は説明するまでもないが、50億の費用のうち、減価償却費(げんかしょうきゃくひ)が5億円だったとする。減価償却は過去に購入した設備を分割して費用として計上する事を指す。 なぜそんな面倒なことをするのか? 例えば商品の製造に使う50億円の機械を買って、これを10年に分けて費用として計上する、といったケースだ。この場合、一気に50億円を費用として計上は出来ない。売上に対応した数字、通常は法律で定められた耐用年数に応じて少しづつ計上する。 すでに書いたとおり費用は売上を得るために使った分しか計上出来ないため、機械を買った時点で50億円の現金が出ていくが、費用としては5億円しか計上出来ない。この5億円が減価償却費だ。 では残り45億円はどこにいってしまうのか。これが資産としてバランスシート(貸借対照表)に計上される。50億で買った機械から消耗した5億円分を差し引いて、45億円の価値がある機械を保有している、ということだ。それが資産と負債の一覧表であるバランスシートに記録される。 そして100億の利益から営業CFを計算するには、現金流出を伴わない費用である減価償却費が売上から差し引かれているため、5億円をプラスする。じゃあ50億の支払い=現金の流出はキャッシュフロー計算書に計上しなくて良いのか?ということになるが、これは次の項目である投資CFに50億が一度に全額計上される。 後払いの売上と費用も同じように計算する。回収していない売上=現金を伴っていない売上は利益から差し引き、まだ払っていない費用は足す。 減価償却費が5億、未回収の売上が10億、未払いの費用が20億、在庫に変化が無し、この場合は 100+5-10+20=115億 これが営業で稼いだ現金、営業CFとなる。 時折、分かりやすい粉飾決算として架空の売上計上が問題になる。これは営業CFを見れば簡単に分かる。売上も利益も増えているのに営業CFは増えていないという状況だ。預金残高まで偽装すれば別だが、未回収の売上(売掛金)が沢山あるとウソをつけば粉飾は簡単に出来る。 もちろん不自然に売掛金が増えれば監査で簡単にバレるが、発覚まで時間がかかればウソの利益を元に株価は上がり、バレた時点で株価は急落する。筆者は決算書を読めない人は株式投資をしない方が良いとアドバイスをするが、これが理由だ。
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