JALの損失「150億円」から考えるキャッシュフローの仕組み。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
■150億円の損失は利益に足し戻す。
ここでやっと話がつながるが、JALが計上する150億円の損失は、さきほどの説明で言えば50億円で買って、まだ45億円分の価値が残っている機械が壊れて動かなくなってしまった、といった状況と同じだ。 この状況では現金の動きが無いためキャッシュフローに影響は無いが、利益を計算する際には計上する。事故が原因のため特別損失だと思っていたが、営業損失として計上すると報じられている。いずれにせよ現金の増減はない。 したがってJALの150億の損失は現金の流出を伴わない費用であるため、利益から営業CFを計算する際に150億円を足す。 機体が損傷したなら代わりの機体を買うのでは?という事になるが、これは投資CFに計上される。例えば300億円の機体を買えば投資CFは300億のマイナスだ。 資産を売却すれば投資CFはプラスになることもあるが、基本的には投資でお金が出ていくため投資CFは通常マイナスになる。
■財務キャッシュフローとフリーキャッシュフロー。
最後に三つ目の項目が財務CFだ。 最初に説明した通り、営業CFで稼いだお金で投資CFの設備投資をまかなう。お金が余れば借金の返済や株主への配当で財務CFはマイナスとなり、逆にお金が足りなければ借金や株主から資金調達を行ってプラスになる。 財務状況の健全な企業は、大規模な投資や買収を除けば売上で投資をまかなう。つまり営業CFと投資CFを合計するとプラスの数字になる。この数字をフリーキャッシュフローと呼ぶ。 このフリーキャッシュフローがプラスでないと配当が払えず借金の返済も出来ないため、フリーキャッシュフローは極めて重要な数字となる。 ベンチャー企業が集客を優先してあえて赤字を出している段階や、利益を後回しにして商品開発をしている場合など、それが意図したものであればフリーキャッシュフローがマイナスでも問題は無いが、フリーキャッシュフローが常にマイナスの企業、常にお金を貸してくれ、追加出資してくれと言ってくる企業はどう見えるか。 投資家にとっては金食い虫でリターンをもたらさないダメな投資先、銀行から見ても貸し出しを回収できるか危うい取引先と判断される。当然、就職・転職する人にとっても危なっかしい企業だろう。 前述のリーマンショック時に潰れてしまった企業であれば、過去最高益でも在庫の過剰な増加で営業CFはマイナス、売却するような資産が無ければ投資CFもマイナスでフリーキャッシュフローはマイナス、そしてその穴埋めに財務CFの部分で追加融資や株の発行による資金調達が出来なければ資金はショート、つまり支払いが出来ずに潰れてしまう。 売れない在庫を抱えても借金が増えても、利益の計算とは関係が無いため損益計算書だけを見ても実態は分からない。在庫も借金もバランスシートには記録されるが、支払いに支障をきたすほどなのかは分かりにくい。キャッシュフロー計算書を見ればそういった資金繰りの悪化は一目瞭然なので、一番重要な決算書という説明になる。
【関連記事】
- ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その1・生活費は年間800万? (中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
- ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その2・10年後の金融資産は4750万!(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
- ■世帯年収1560万円の共働き夫婦は、9540万円の湾岸タワーマンションを買えるのか? その3・大学卒業時点で返済は実質的に終わり(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)
- ■変動金利は危険なのか?(中嶋よしふみ FP)
- ■開業13年目のFPが仕事で使う「危ない投資」の見分け方。(中嶋よしふみ ファイナンシャルプランナー)