「人間じゃない」青学大・野村昭夢が山下りのヒーローになったワケ…箱根駅伝2025「TVに映らなかった名場面」復路編
【7区】イマイチ分かりづらかった佐藤圭汰の凄さをもっと伝えたい
今大会の駒澤大は佐藤圭汰選手が戻ってくるというのが一番のトピックスでした。 前回大会、3区で青学大の太田蒼生選手と熾烈なデッドヒートを繰り広げた佐藤選手は、今シーズンは怪我の影響で、出雲駅伝と全日本大学駅伝を欠場しました。 また、佐藤選手は東京2025世界陸上の出場を狙える逸材でもあります。となると、怪我からの復帰戦でエース区間の2区は負担が大きい。太田選手と同じ区間を走ってリベンジも見たいけど、アドレナリンが出ている状態だと壊れてしまうのではないかという危惧もある。 そこで自分のリズムで走れる7区がいいのでは、となったのではないでしょうか。 というのも、前回大会では太田選手にリズムを崩されたのが、佐藤選手の敗因という見方が大きかった。7区であれば集団がばらけて単独走になるので、その心配はありません。 7区は風が強く、アップダウンもあるタフなコースです。その中で佐藤選手が出した1時間0分43秒という区間新記録は、平地で無風だったら、ハーフマラソンに換算すると1時間を切るぐらいの価値があるタイムです。単独走で比較対象がいないため、凄さがイマイチ分かりづらかったと思いますが、陸上マニア仲間のポールさんは「沿道で佐藤選手が通り過ぎた時だけ風が来たんです! あれは本物です!」と言っていました。 余談ですが、今回の移動中、佐藤選手と同じ授業を取っているという駒大生を見かけました。彼は乗客みんなに聞こえるくらいの大きな声で「佐藤圭汰みたいな選手と同じ授業を受けているのが信じられないよ」と言っていて、正直うるさいなと思って聞いていたのですが(笑)、「今後、佐藤圭汰みたいな選手が7区を走ることはないからね」と力説しているのには、乗客全員「たしかに」と深くうなずいていました。
【8区】8区区間記録の行方を日本一気にしている北海道の小松さん
平坦な前半と、上り坂が続く後半。8区は前・後半で全く違う特性を持つコースになっています。 それゆえ、序盤は毎年のように「区間新ペースです!」となるのですが、後半の遊行寺坂などのアップダウンで削られ、最後まで持たないのが8区の面白さ。特に今回は、例年なら日差しのきつい時間帯ながら曇り空ということもあり、今年こそ区間新が出るのでは!と盛り上がっていました。それでもやっぱり出ないのが8区の難しさなんです。 そんな8区の区間記録をもっとも気にしているのが、2019年の東海大在学時に区間記録を更新した小松陽平さんでしょう。彼は自分の記録の行方を見届けようと、戸塚中継所で待機。Xで「覚悟は出来ています」とポストしていました。 小松さんは東海大からプレス工業、日立物流(現ロジスティード)で競技を続け、2024年に引退。現在は北海道に住んでいます。北海道からわざわざ神奈川まで……。そこまでの思い入れを感じるのは、國學院大時代に10区を走った際、コース間違いをした交差点に毎年現れる寺田夏生さんぐらいのものです。 レース後、小松さんは「改めて自分の記録を誇りに思います!」とポスト。これを見て、陸上選手は色々な記録を持っているけれど、箱根の区間記録はやはり特別なものなんだと感じました。小松さんの区間記録更新は来年に持ち越されましたが、この難コースを誰が攻略するのか。楽しみです。
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