後発の「楽天ポイント」が見せた逆転劇、王者「Tポイント」を抜き去った“戦略の大転換”とは?
■ 画期的なアイデアが生んだ「Tポイントの優位性」 ──著書では、ポイント経済圏の黎明期(れいめいき)である2003年に始まった「Tポイント」のビジネスモデルについて解説しています。同サービスは集客効果だけでなく、マーケティングの進化にも寄与したとのことですが、具体的にどのような点が優れていたのでしょうか。 名古屋 Tポイントの最も優れていたのは「データを収集する発想」があった点です。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)はレンタルビデオのTSUTAYAを展開しており、会員の住所・氏名・年齢を全て把握しています。 ポイントができる以前、店側は「500円の弁当が1個売れた」ということは把握できるものの、「誰が買ったのか」までは分かりませんでした。しかし、ポイントを付与すれば、購買データと個人情報をひも付けることができるので「この弁当を買った人は誰で、どこに住んでいて、年齢はいくつ」ということまで分かります。 このデータをマーケティングに生かせると気付いたことが、Tポイントの画期的なアイデアにつながりました。従来はチラシやクーポンの配布しかできなかったところを、データを使えば「このお客さまはリピートしてくれるから、このクーポンを渡そう」という具合に、より効果的なマーケティングにつなげられます。 消費者の立場からすると、ポイントは「もらえるもの」という感覚が強いでしょう。しかし、事業者の立場からすると「データを提供してもらうお礼にポイントを付けている」というニュアンスが強いのです。 そう考えると、消費者と事業者の双方にメリットがある点において、ポイントビジネスは優れた仕組みだと思います。Tポイントがなければ、この発想も生まれてこなかったでしょう。 ──データ活用に苦戦する企業が多い中で、ローソンやCCCがデータマーケティングを推進できた背景には何があるのでしょうか。 名古屋 今となっては、日々買い物をする上でポイントが身近な存在になっています。しかし、当時は共通ポイントというものを誰も体験したことがありませんでした。 当初、TポイントはローソンとENEOS、TSUTAYAしか加盟店がなく、今から考えると使える範囲は狭く、利用する人も限られていました。そのため、開始後3年くらいまでは消費者にもなかなか浸透せず、店舗での地道な声がけやステッカーによるアピールなどで認知させる必要があったわけです。だからこそ、0から1を生み出すフェーズで地道な取り組みを続けて成果を生んだことは大きかったと思います。