「電王戦」「電王トーナメント」が将棋界にもたらしたもの
ドワンゴは8月、将棋の最強コンピューターソフトを決める大会「将棋電王トーナメント」について今年は開催せず、昨年の大会を持って終了させることを発表しました。同大会優勝ソフトとプロ棋士代表が対決する将棋「電王戦」もすでに2017年に終了しており、これに伴って同トーナメントも幕を閉じた形です。人間対AI(人工知能)の象徴のような形で話題になった「電王戦」や「電王トーナメント」は将棋界にどのような影響を与えたのでしょうか。
「トーナメント」に勝てばプロ棋士と対決できた
「将棋電王トーナメント」は2013年にスタート。毎年秋に開催され、第1回の上位入賞ソフトはプロ棋士との5対5の団体戦である「将棋電王戦」の参加権利を獲得できました。さらに第3回、第4回は、優勝ソフトがプロ棋士代表(叡王戦の優勝者)との一騎打ち「電王戦」に進むことができ、将棋ソフト「Ponanza(ポナンザ)」が2年連続でプロ棋士に勝利。特に2017年は現役タイトル保持者である佐藤天彦名人を破ったことで、「すでにソフトは人間を超えている」と話題になりました。お隣の囲碁界でも2016年、米グーグル傘下のディープマインド社が開発した囲碁AI(人工知能)「アルファ碁」がトッププロ棋士イ・セドル氏(韓国)を破っています。 将棋ソフトの開発は40年以上前から始まったといわれており、1990年にはソフトの頂点を争う「世界コンピュータ将棋選手権」がスタートしていました。ただ当初はなかなか棋力が伸びず、人間を追い越すのはかなり先と思われていました。しかし、2006年に「世界コンピュータ将棋選手権」で優勝した「Bonanza(ボナンザ)」の設計図が公開されると、開発速度が一気に加速します。ボナンザは「機械学習」と呼ばれる手法を導入。過去の大量の棋譜を学び、その局面ごとの形勢の良し悪しを自動で評価する手法を採っており、大きな読みミスがかなり少なくなったことが強さにつながっています。「機械学習」の考え方は将棋ソフトだけでなく、現在のAI開発のキーワード、深層学習(ディープラーニング)につながっています。 「電王戦」の対決はインターネットで生中継され、一般マスコミでも大きな話題となりました。また、「電王トーナメント」で上位入賞すればプロ棋士と真剣勝負できることが、開発者のモチベーションを上げたことも見逃せません。