「海上がりの一杯」で環境保護!湘南唯一の酒蔵&サーファー5人が作る日本酒「おふしょあ」
5人からは「海上がりに飲みたい」「海でバーベキューをするときに飲みたい」「魚介に合わせて飲みたい」、そして「湘南の酒をお土産として持って帰ってもらいたい」などの意見が出たという。 「少し内陸ですが、熊澤酒造さんは海からも近いので、まずは海風を感じるようなミネラル感がある味を目指しました。また、日本酒は甘いと思われがちですが、海上がりにもおいしく飲んでもらえるよう、甘さを抑えて、すっきりとした味わいにしています。 海から上がったらビールという人も多いと思いますが、より複雑な旨味を持つ日本酒を取り入れてもらえれば、波乗り後の楽しみの幅が広がるはずです」。
旨味がありながらも、すっきりとキレの良い後味は、海上がりの開放的な気分にぴったり。 「まだまだ暑い今の季節は、氷を入れて、ロックで飲むのもおすすめです。中硬水で仕込んだ『おふしょあ』は、スッキリとした味わいながら、骨格がしっかりとしているので、氷が溶けて薄まっても、味のバランスが崩れにくく、最後までおいしく飲むことができます」。
中硬水の水に始まり、すべての原料が湘南産というのも「おふしょあ」のこだわりだ。 水は蔵の井戸から汲み上げられた、丹沢山系の伏流水。酵母は熊澤酒造の敷地内に残る旧防空壕から採取した、湘南育ちの酵母BK-5を使用。 熊澤酒造の自社水田で育てられた酒米・五百万石は、アミノ酸が多く、深い味わいが特徴だ。
耕作放棄地を蘇らせ、酒米を育てることで海を守る
そして、この酒米が、実は環境保全にも深く関わっている。昔は水田地帯も多かったという湘南地区。だが、実は近年、この地でも耕作放棄地が増えているという。 「耕作放棄地がその後どうなるかというと、産業廃棄物置き場などになるんです」と語るのは、熊澤酒造で酒造りを担う宮川 毅さんだ。
「産業廃棄物置き場が増えると、畑への不法投棄が増え、景観が悪くなるだけでなく、廃棄物から流れ出るさまざまな物質が土や川に流れ込み、汚染される懸念があります。また土壌が汚染されれば、河川を通して海の環境破壊も当然進みます」(宮川さん)。 そこで熊澤酒造では2020年から「酒米プロジェクト」を始動。 同社に農業経験はなかったものの、周囲の農家の協力もあり、耕作放棄地を買い上げ、水田へと戻し、日本酒作りのための酒米を育てている。 「今回『おふしょあ』には、この酒米プロジェクトの米を使っています。まだ4年目ですが、将来的には商品の全てを自社の酒米に切り替える予定です。 水田が再生すれば、微生物が川から海へと流れ込み、海の土壌が改良され、海洋資源も復活する。その海でサーフィンを楽しみ、そこで育った海の幸をいただいて、美味しいお酒が飲める。そういった幸せな循環を実現していきたいと思っています」(宮川さん)。
陸から海に向かって吹く風を意味するオフショア。 「湘南で生まれ育った僕たちが、今いろいろな仕事をしているように、湘南で生まれたお酒が、いろいろなところで楽しまれるようになって欲しいという思いが込められています」と語る谷口さん。 サーファーなら、湘南方面で波乗りをした経験がある人も多いだろう。湘南の美しい海を長く楽しめるように、「おふしょあ」を手に海へと繰り出してみてはいかがだろうか。 林田順子=取材・文
OCEANS編集部