エミン・ユルマズ氏「PBR革命の次は、PSR革命がやってくる」四季報で見るべき指標はPERとPBRだけじゃない
『会社四季報』は、日本国内全上場3900社超の業績、財務、株価、独自予想などを網羅した企業情報誌で、株式投資のバイブルとして多くの投資家に愛されている。いまや2000ページを超える四季報を、15年間全ページ読み続けたのが、数々の経済予測を的中させる最強のエコノミスト、エミン・ユルマズ氏である。 本記事では、エミン氏の四季報活用術が全公開された『エミン流「会社四季報」最強の読み方』を一部抜粋・再構成のうえ、会社四季報を読む際に、PERとPBR以外で注目すべき株価指標について解説する。 PERだけでは株価が割安か割高かが判断できない理由
■PERやPBRで測れない銘柄 PERやPBRはよく聞く株価指標でも、PSRはあまり聞いたことがないかもしれない。PSRはPrice to Sales Ratioの略で、日本語では「株価売上高倍率」と訳される。計算式は次のとおりだ。 PSR=時価総額(株価×発行済株式数)÷売上高 キモは時価総額を売上高で割っていることだ。 たとえば、PER(株価収益率)は、時価総額(株価)を純利益(1株あたり純利益)で割って求められる。ということは、その企業の業績が赤字だったりすると、PERは算出不可能だ。これでは株価の割安、割高を推測するための指標が、PBRだけになってしまう。
実はPSRが注目されるようになったのは、昨今、利益だけで割安かどうかを測るのが難しい企業が増えてきたからだ。 代表的なのはベンチャー企業だ。ベンチャー企業は成長が命といっても良い。利益が赤字でも、積極的に投資を行い、シェアを取りに行く。こうしたベンチャー企業の株価を評価する場合、PERでは測れないので、利益の代わりに売上高を用いたPSRで見るようにするのだ。 実は、私がM&Aアドバイザリーをやっていた時に、株価の割高、割安を測る時、PERよりもPSRを重視していたことを白状しよう。
見方は簡単で、前出の計算式でPSRが1倍を割り込んでいれば割安と考える。同じように1倍割れを割安とみなす株価指標にはPBRがあり、特に2023年の株式市場では、PBR1倍割れの企業が大いに物色された。 PBR1倍割れを意識する投資家は少なくないと思うが、PSR1倍割れを意識している投資家はあまりいない。そのため、日本企業のなかには、PSRが1倍を割り込んでいるものがまだ結構、残されている。2023年のPBR革命の後、私はPSR革命が来ると見ているので、PSRから見て割安な銘柄には注目しておくと良い。