「世界から見た日本市場の魅力は低下している」調達・購買コンサルタントが適正な値上げを“肯定”する理由
連日のように値上げのニュースが報じられている。2023年1~4月で1万2054品目の食品が値上げするとみられており、前年比2倍ペースで値上げが続いている。度重なる値上げに生活が苦しいという声が聞かれるが、調達・購買コンサルタントの坂口孝則さんは「値上げは一概に拒絶すべきことではない」と指摘する。その裏には、安値にこだわってきたあまり、世界市場で買い負けを続ける日本の危うさと市場の魅力が低下していっている現状があるという。「値上げと同時に給与も上げるべき」とも語る坂口さんに、その理由を聞いた。(聞き手:荻上チキ/TBSラジオ/Yahoo!ニュース Voice)
明らかな便乗値上げはNG。しかし、値上げ自体は必要
――連日のように、値上げのニュースが取り上げられています。中には便乗して値上げしているケースもあるのではと疑うこともありますが、坂口さんはどのように考えていますか。 坂口孝則: 先日、テレビで値上げに関して、500円のラーメンを1,000円にするという店を紹介していました。輸入小麦の政府売渡価格、つまり小麦の原価は2021年10月期と2022年4月期を比べると17.3%値上がりしています。その程度の値上がりならば受け入れる範疇だと思いますが、倍に値上げするのは便乗と言わざるを得ないかなと思います。 そのような動きに対しての見極めは必要ですが、僕は値上げ自体に反対ではありません。小麦の価格だけでなく、燃料費や水道代電気代、人件費が上がっているのは事実ですし、材料費が上がるのはお店の努力不足というわけではない。仕入れ値が上がった分だけ価格を上げるのは便乗値上げではないし、正しい判断だと思います。 ――最近値上げされた卵は、長年「物価の優等生」と言われてきました。 坂口孝則: 価格が優等生と言われてしまう背景には、やっぱり価格は変わらない方がいい、安い方がいいという前提があるんですね。ただ、それだと市場に対してはずっと追随していないことになります。消費者としては、価格は変わらず安い方がよかったかもしれません。しかし、労働者の立場から見ると、その卵を作っている鶏卵業にお金が入らないことになり、ひいては給料が増えないことにつながります。そのようなことも考えて、価格維持や値上げということに向き合っていけたらなと思います。