「世界から見た日本市場の魅力は低下している」調達・購買コンサルタントが適正な値上げを“肯定”する理由
「日本には魅力がない」世界市場から取り残されつつある現状
――日本の現状は、世界的に見てどういう状況なのでしょうか。 坂口孝則: デフレとまでは言いませんが、日本の価格は横ばい。長い間、値上げせず、給与も上がらず、物が買えなくなっています。大企業だけでなく、中小企業も適正な価格に値上げを進めないと、どんどん世界の物価から離れていってしまいます。 私、この前ドキッとしたんですけども、物流の世界では2年ぐらい前から「日本に売ってくれない」だけじゃなくて「日本に寄ってくれない」というのが話題になっていて。中国とアメリカを船で行き来する北米航路は旺盛なのですが、今までは日本にも寄っていたコンテナ船が寄ってくれなくなっているんです。これを「抜港(ばっこう)」と言いますが、なぜそんなことになるのかを物流会社それぞれに聞いてみますと、単純に「日本はもうからない」と。日本に寄っても満載にならないし、送る物の価格も高くないので利益が出ない。だったら注力するのは、欧州やアメリカ、あるいは中国にならざるを得ないというんですね。カウントしてみますと1年間に巨大船だけでも50隻以上は抜港していました。 そして、物だけでなく人も集まらなくなっています。カンボジアとベトナムの技能実習生のうち、この2~3年で日本を希望する人はガクンと減っているそうです。そうした方たちが来日したら、最低賃金で働くことになると思うのですが、そもそも日本人の給料は上がっていません。一方で諸外国は上がっていて、しかも円安が続いていた時期がありました。そうすると韓国などのほうがもう条件がいいわけですよ。かつて、外国から見た日本は輝いていましたが、いまはそんなことはなく、諸外国の人が選びたい国でもなくなってきている。これは、現場の関係者の話を聞くと、とても辛い状況になっていて、私自身もすごくショックなことでした。 今までは、日本経済は物も人材も「外国から調達すればいいや」という発想でビジネスをしてきましたが、日本は徐々に貧しくなっている状況です。物も来ないし、人材も来ていただけないっていう危機的状況は何とか改善していかねばならないと思っています。