一見ムダに思えるバランスシートのアップデートが悲惨な結末を防ぐ
■ 2. 人の変化の種類とその影響 夫婦関係における変化を理解するためには、一口に変化と言っても様々なタイプの変化があることを押さえておくことも重要です。 ●価値観そのものの変化 価値観の変化は、当人にとっては成長でも、相手を苛立たせる原因になりやすいです。 • 例:専業主婦志向から経済的自立志向への変化。 • 影響:パートナーがその変化についていけない場合、すれ違いや摩擦が生じる可能性があります。 ●環境の変化によるもの 職場や住環境などの外部要因による変化を、相手が変わってしまったものと誤解しないように留意する必要があります。 • 例:職場が遠くなり、家族と過ごす時間が減る。 • 影響:家庭内での負担の偏りや、コミュニケーション不足が問題となることがあります。 ●馴れ合いや甘えによる変化 長年の付き合いによって気を抜いたり甘えが生じたりしたことで相手の満足度を下げてしまう場合があります。 • 例:感謝を示さなくなる、努力を怠る。 • 影響:関係のマンネリ化や不満の蓄積につながります。 ●ライフステージの変化 人生のステージが変化することで、自然と夫婦の関係性も変わります。 • 例:子供の独立や定年退職。 • 影響:新しい生活スタイルに適応する必要が生じ、これが関係の見直しを促すこともあります。 ●健康や体力の変化 加齢や病気など、身体的な変化も夫婦関係に影響を与える要因です。 • 例:疲れやすくなり、家事や育児の負担が偏る。 • 影響:互いの役割分担を再調整する必要性が高まります。
■ 3. 過去と現在の比較から得られるもの 過去と現在のバランスシートをそれぞれ比較することで、以下のような気づきが得られます。 1. 変化の本質を理解する その変化が相手の価値観や問題意識の持ち方といった内部要因によるものなのか、職場環境やライフステージ特有のニーズ変化など、外部要因によるものかを見極めます。 2. 自分たちの努力の跡を確認する 過去を冷静に振り返ることで、当時乗り越えた困難や達成したことなども見えてきます。 それは、自分たちがどれだけ協力し合い、関係を築いてきたかを再確認する機会となります。 こうした振り返りによって、現在の課題に対しても、過去に培った解決能力や努力を信じる自信が生まれます。 3. 現在の悪化部分をどうするか検討する 過去と比較して現在の状態が悪化している場合、努力や工夫で改善可能かどうかを検討します。 改善可能であれば、具体的な行動計画を立てましょう。例えば、感謝の気持ちを再び示す、時間を確保するためのスケジュール調整など、小さな一歩から始めることが重要です。 一方で、状況や価値観の変化により以前の状態に戻すことが難しい場合、過去の理想を無理に追い求めるのではなく、新たな関係性のあり方を模索する中で、新規の資産を積み上げていく必要があります。 なお、相手の変化がキャリアアップや成長によるものの場合、それは自分の満足度を一時的に下げることがあるかもしれません。 しかし、その変化が相手にとっての成功や自己実現に繋がるような場合、自分が被害者のように振る舞うのではなく、相手の成長を尊重し、それを相手に示す努力をすることで関係が好転する可能性があります。 こうした態度は、互いにリスペクトを深め、より良い関係性を築くための基盤となります。 このように過去のバランスシートを作成し、それを現在と比較することで、夫婦関係における変化を理解し、改善への道筋を見出すことができます。 この作業は、単に過去を振り返るだけでなく、未来の関係をより良くするための重要な一歩です。 夫婦がお互いの変化を受け入れ、共に歩んでいける関係を築くために、ぜひ実践してみてください。
加藤 哲雄