キジマタカユキと坂本龍一の関係 オーダーメイド製作から生まれたコラボ秘話
デザイナー 木島隆幸が手掛ける「キジマタカユキ(KIJIMA TAKAYUKI)」が、2023年に死去した音楽家 坂本龍一とのコラボレーションキャップを3月28日に先行発売する。音楽とファッションという異なる分野で自らの表現を追求する両者による異色のコラボは、生前坂本と交流があった木島のとある「心残り」がきっかけとなって実現したという。木島が「自分の力を全て注ぎ込んで完成させた」と語る坂本のオーダーメイドキャップを基にした同コラボから紐解く、木島と坂本の信頼とリスペクトに溢れた関係性。 【画像】生前坂本が愛用していたオーダーメイドキャップ
オーダーメイドのキャップ製作から生まれた坂本龍一との出会い
木島と坂本の関わりは、坂本がキジマタカユキのキャップを愛用していたことからスタート。2012年に坂本が還暦を迎えた際は、事務所スタッフからの依頼でキャップを製作した。木島は坂本が自身が製作したキャップを愛用していることに喜びを感じながらも直接の面識はなかったが、2019年8月に坂本から完全オーダーメイドでキャップ製作の依頼があったことで本格的な交流に発展した。 キャップのオーダーメイドにあたり坂本は、代官山に構える木島のアトリエを訪れたが、そこでのやりとりは日常会話のみ。「ニューヨークのレストランにも被っていけるようなシックなワークキャップ」という要望以外に、デザインやディテールについては一切の指定がなかった。木島は、それまで坂本が被っていたというノーブランドのワークキャップをベースに、木島自身の坂本に対する解釈を織り交ぜながら製作。目の詰まったコットン100%の上品な生地に洗い加工を施すことで気取りすぎない印象に仕上げ、パターンなどを微妙に変えた複数型を納品した。「ディテールを一任されたことで、坂本さんからの期待やリスペクトを感じて創作意欲が湧き上がった。お顔に合わせて幅やクラウン(帽子上部)の高さをミリ単位で調整したほか、パターンも何度も再考して自分の力を全て注ぎ込んで完成させた」(木島)と語るオーダーメイドキャップを坂本は非常に気に入り、公の場に立つ時だけでなく、病床でも被っていたほどだったという。