キジマタカユキと坂本龍一の関係 オーダーメイド製作から生まれたコラボ秘話
果たせなかった約束を胸に、木島がコラボレーションに込めた想い
オーダーメイドキャップを坂本に納品して初めての冬、木島のもとに坂本から再度依頼が届いた。「ニューヨークの冬は寒いから、ワークキャップに耳当てがついた帽子が欲しい」。木島は喜んで引き受け、すぐにサンプルを製作して送ったというが、坂本からは「なんだかイメージと違う」というフィードバックが返ってきた。「どんな帽子に仕上げようかと考えているうちにコロナ禍になり、落ち着いてきた頃には坂本さんが体調を崩されてしまった。そしてとうとう帽子が完成しないままお別れすることになってしまい、それが本当に心残りだった」(木島)。 依頼を果たせなかった無念を胸に、木島は2024年秋冬コレクションを坂本のアルバム「async」から着想を得て製作することを決意。「勝手にテーマにさせていただくのは心苦しい」との気持ちから、坂本のパートナーに許諾を得るためコンタクトをとったところ、逆に坂本の命日である3月28日に合わせてキャップを作ってほしいという旨の依頼を受け、今回のコラボが実現したという。コラボキャップは、第1弾オーダーメイドで納品した複数点の中で坂本が特に気に入っていた1型と全く同じ素材、パターンで製作した。 長い時間を共にした訳ではないが、アトリエでのやり取りを振り返り、木島は坂本のことを「どこかきゅんとする一面がある人」と紹介する。「オーダーした帽子をお渡した時に『この髪と眼鏡で坂本龍一だとバレちゃうけど、帽子を被って眼鏡を外せば山手線にだって乗れるんだよ』と言いながら恵比寿駅に向かって歩いていったのが印象的だった。クールなイメージだけど、お茶目な一面も持ち合わせていた」。 木島はコラボキャップの発売に際し、「それぞれの想いで帽子に向き合ってほしい」と語る。毎日被って自身の生活に馴染ませるもよし、ここぞの場面で使うもよし。「どんな使い方であっても、この帽子が着用する人にとって坂本龍一という人物を思い出すきっかけになれば嬉しい」と話した。