天然のアルコールで日常的に酔っぱらっている野生動物たち、「コカイン・シャーク」で注目
アフリカゾウも果実に酔う
アフリカゾウがマルラの木の発酵した果実を食べて酔っぱらったという報告は、一般的な文献にも科学的な文献にもあふれている。ただし、ゾウの体は大きく、酔うためには大量のアルコールが必要であることを理由に、こうした報告の妥当性を疑問視する科学者もいる。 カナダにあるカルガリー大学の大学院生だったマレイケ・ジャニアック氏は、さまざまな種がどのようにエタノールを代謝するかを研究した。ジャニアック氏らが学術誌「Biology Letters」に発表した2020年の研究では、アルコール脱水素酵素の能力を変える遺伝子変異がさまざまな種で見られることが判明した。アルコール脱水素酵素は、エタノールの分解に関わる主要な酵素だ。 私たちとアルコールの蜜月関係を考えると当然かもしれないが、人は非常に効率よくアルコールを分解できる。私たちがウマやウシ、ブタより酔いにくいのはそのためだ。ジャニアック氏は、果実を食べる種の多くもエタノールを無毒化できることを発見した。これはおそらく、熟しすぎた果実にエタノールが含まれるためだろう。 アフリカゾウはアルコールを代謝しにくい遺伝子変異を持っており、「巨大な体でもマルラの果実で酔うことを示唆している」とジャニアック氏は述べる。とはいえ、「ゾウたちは快楽を求めているわけではない」とも言い添える。「ただ空腹なだけです」 「糖が存在すれば、エタノールは生成されます。そして、糖はエネルギーになります」とジャニアック氏は話す。「エタノールを消化できれば、腐った果実をもっと食べることができるかもしれません」
マジックマッシュルームを食べるトナカイ
ロシアのシベリアでは、トナカイ(カリブー)が幻覚作用を持つキノコであるベニテングダケと生息地を共有している。赤い傘に白の斑点が入っていることから、ベニテングダケはクリスマスとも関連づけられており、2018年の研究によれば、シベリアのシャーマンは「酩酊と幻覚」のために利用している。 毒もあるが栄養もあるベニテングダケをトナカイが食べていることが記録されており、トナカイは複雑な胃で毒素を中和している。 ベニテングダケを摂取することで、人のように吐き気や嘔吐(おうと)、見当識障害を起こしているかどうかは不明だ。