イギリスから送られてきた謎の小包と「アップルコンピュータ」との出会い[第1部 - 第4話]
運良く引き受けていただけることになったので、Macの最上位機種の「Quadra(クアドラ)」と、キャノンの数百万円もするカラープリンター、PostScriptへの変換機械を購入しました。合計で1000万円ほどかかったと思います。当時の上司である中村本部長は、新しいものへの感度が高い方だったので、僕が「これからはこういう時代ですよね?」と言うと、「おお、そうだな」と予算が通りました(笑)。
杓谷:第2話で登場した「テレックス」を使用していたのが1982年頃のことですから、たった10年で仕事の仕方が大きく変わりましたね。その中心にコンピューターの存在があったわけですね。 佐藤:1000万円かけて購入した機材を会議室に詰め込んで、氏家さんのオフィスから独立したデザイナーさんに使ってもらうことにしました。メインは旭通信社の仕事でしたが、他の仕事をしてもいいという条件でした。僕は日々の業務では彼の仕事に直接関わることはなかったのですが、用がなくてもその会議室に足を運んで、お茶を飲みながら様子を見ているうちに、コンピューターの世界、とりわけアップルコンピュータにのめりこんでいきました。
Mac'n Roll Nightで感じた業界の熱気
佐藤:1990年代、アップルコンピュータジャパン(アップルコンピュータの日本法人)は「Mac'n Roll Night(マックンロールナイト)」というイベントを毎年開催していました。Mac専門誌、広告代理店、ソフトウェア会社などさまざまな関係者が参加し、アップルコンピュータジャパンの社員たちもバンドを組んで競い合うといった楽しいイベントでした。 そのイベントの責任者だったのが、後にアップル日本法人の社長となる方です。当時はアップルコンピュータのマーケティングを統括していました。彼もドラマーとしてライブに参加していましたね。 また僕は、AIクリエーターの松尾公也さんと大学時代からのバンド仲間です。2023年に第1回AIアートグランプリを受賞し、NHKや民放に取材出演、音楽生成AIに関する本も発売して、一気に時の人となりました。そんな彼ですが、当時はソフトバンクが発行していた雑誌『MacUser』の編集長を務めていて、編集部のメンバーとともにこのイベントでバンド出演をしていたので、僕もその様子を知ることができました。熱気に満ち、勢いのある業界だなと感じたものです。 次回は11/14(木)公開予定(隔週木曜日更新)です。