足のむくみから重大な病気が見つかるケースはあるのか?【日本版「足病医」が足のトラブル解決】
【日本版「足病医」が足のトラブル解決】 足に痛みがあっても歩けないほどの痛みでなければ、放置する方も多いでしょう。ですが、足の症状から重大な病気が見つかるケースはまれではありません。 足<下>正しい靴を選ぶ4つのポイントと足のメンテ術 足の総合病院院長が指南 以前、当院を訪ねて来られた60代後半の女性もそんな方でした。 「足の違和感を覚えたのは、主人と外食に出かけた後のことでした。帰りの電車で左足の甲に痛みがあり、自宅で靴下を脱いで見てみると、小さな靴擦れができていたのです。絆創膏(ばんそうこう)を貼って様子を見ていたのですが、一向に傷が治らないばかりか足の指先が紫色に変色してきて……」 その後は足の痛みをかばいながらも、なんとか仕事は続けていたとのこと。ところが1カ月後、足先の変色が足首にまで広がり、受診した近所の皮膚科で塗り薬を処方されたといいます。次第に靴擦れでできた傷の痛みが悪化し、当院を受診されたのです。初診時に動脈硬化の有無を調べるABI(足関節上腕血圧比)検査と下肢血管エコー検査を行っても異常はありません。 そこで、膠原(こうげん)病由来の血管炎ではないかと目星をつけて血液検査を行うと、初期の膠原病と判明しました。幸い、膠原病の治療を受けたことで足先の変色は改善し、治りが悪かった足の傷も塞がりました。この方のように、足に不調があっても局所的な症状と捉えられ、正確な診断を受けるのが遅れると命に関わるリスクが高くなるケースもあります。 中でも注意したいのが片足の「むくみ」です。以前、半年前から右足だけパンパンにむくむようになり、指で押すと皮膚が元に戻らないといった訴えで受診された60代の男性がいらっしゃいました。通常、心臓や腎臓、肝臓の異常によって起こるむくみは両足に見られるので、片足に限定したむくみは、そちら側に何かしらの器質的な異常があるサインともいえるのです。 血液検査や超音波検査を行っても、むくみに関わる血管や静脈、リンパ管などに異常はありません。しかし、CT検査を追加で行ったところ骨盤内に大きな「悪性腫瘍」が見つかり、これが静脈やリンパの流れを阻害してむくみを起こしていると分かりました。その後は腫瘍内科に転科され、がんの治療を開始されたといいます。 健常者であっても、長時間の立ちっぱなしやフライトの後は、足がむくむのは珍しくありません。一過性のものであれば放置しても構いませんが、慢性的に続く場合には重大な病気が隠れているケースもあるということです。 (田中里佳/順天堂医院足の疾患センター長)