渋谷区の全小中学校が「探究学習」を倍増。企業・地域コラボのホンモノ体験が「My探究」を支える
◆小学校低学年から探究の基礎を学び、ホンモノを体験し、「My探究」へ
とはいえ、「これ」というテーマを見つけるのは容易ではありません。児童生徒が自分の探究テーマを見つけられるよう、1年間を大きく3つのブロックに分け、段階的に取り組むカリキュラムとなっています。 「最初は、そもそも探究ってなに?というところからスタートし、探究の基礎となる情報収集、データ分析、プレゼンテーションなどのスキルを身につけます。さらに中盤は、従来の総合的な学習の時間での取り組みのように、福祉や環境といった共通のテーマについて学習します。そのうえで、後半はそれぞれが自分で課題を設定し、My探究に取り組みます。また、前半を中心に年間を通して、企業や地域の協力のもとさまざまな体験学習を行います。課題設定の前提となる、なんでこうなんだろうという問いや、もっと知りたいという知的好奇心をもってもらうため、外部と連携したこの“本物体験”には力を入れています」 総合的な学習の時間が始まるのは小学3年生からですが、小学1・2年生についても、「自分でテーマを決め、考え、意見を発表する」という機会を多く設けています。 「最初は教員がテーマや問いをいくつか設定し、そこから選ばせるというように、主体的な学びを段階的に深めています。これまでは、先生が提示したテーマや課題に取り組むのが学校の当たり前でしたが、子どもに選択肢を与えることで、自分で決めて自分でやるという“自己決定力”を育みたいと考えています」
◆子どもたちの「My探究」を支える地域・外部との連携
シブヤ未来科の狙いは、未来を生きる子どもたちに必要な力を身につけてもらうこと。そのためにも、「自ら考え判断して学び続ける自己調整力」「多様な仲間と協働して新たな価値を生み出す創造力」「自分が思い描く未来を実現する挑戦力」を育むことを目指しています。 このシブヤ未来科のコンセプトは全小中学校で一貫していますが、どのように取り組むかは各学校に委ねており、それぞれが特色ある展開をしています。 「企業との連携で視野を広げることを重視する学校もあれば、地元の商店街と連携して地域密着型の探究を行う学校もあります。例えば、生徒による校則改革に取り組む区立松濤中学校では、スタートアップの起業家を呼んで話を聞き、よりよい学校づくりについてディスカッションを行いました。生徒によるピッチ(意見発表)では、中学校も単位制にしたらいい、登校時間を遅くすれば不登校の生徒も通いやすくなるといった私たちも驚くような意見が出ました。最後に起業家の方にフィードバックをもらうことで、生徒たちにとって思考を深める機会にもなりました。また、企業と一緒に商品開発をしたり、大学や大学院と共同でプロジェクトに取り組んだりするケースも出てきています」