北九州市の中学生殺傷、当初は「20日逮捕案」も…「遅い」捜査幹部の指示受けカメラ映像など急ぎ証拠化
北九州市小倉南区のファストフード店で起きた中3男女殺傷事件は26日、容疑者逮捕から1週間を迎えた。社会を震撼させた事件は、発生5日後に容疑者が逮捕された。「一刻も早い逮捕が地域の安心につながる」と捜査してきた福岡県警。その一端が取材で見えてきた。(藤本鷹史) 【写真】平原容疑者
事件は14日夜に発生。店の防犯カメラは不鮮明で逃げた男は特定できなかった。軽装だったことや目撃情報から県警は当初、近くの人物が徒歩で北方向に逃走したと推測。だが、北側の防犯カメラに不審人物は見当たらなかった。
「思い込みで初動を誤るわけにはいかない」と県警は北側以外のカメラも捜査。不審車が確認され、映像をつなげて足取りを追うリレー捜査で、現場から約1キロの住宅街に住む無職平原政徳容疑者(43)が浮上した。水面下で24時間態勢の行動確認が、17日から始まった。
一方で周辺地域には不安が広がっていた。学校では子どもを送迎する保護者の車が列をなし、欠席する児童・生徒も相次いだ。県警は市内に配置する警察官を大量に投入し、住民の安全確保に努めた。
逮捕状の請求には一定程度の証拠が必要で、捜査の進捗を踏まえ「20日逮捕案」も検討された。
安心感をもたらすには逮捕しかない――。「20日では遅い」「とにかく急げ」。捜査幹部の指示を受け、捜査員は百数十台のカメラ映像などを急ピッチで証拠化。18日に男子生徒(15)への殺人未遂容疑で逮捕状を請求した。逮捕状発付を受けた19日の朝に捜査員が自宅の窓から突入して身柄を確保、逮捕した。平原容疑者は17日以降、ごみ出しなどを除き、自宅からほぼ出ていなかった。
「この5日間、捜査員は必ず捕まえるという意気込みで、不眠不休で捜査した。必死でやりました」。19日正午、小倉南署での会見で、捜査幹部は力を込めた。事件の全容解明に向け、県警は女子生徒(15)への殺人容疑も視野に捜査を続けている。