マスク氏との蜜月が原因?トランプ新政権であり得るサイバー分野「最悪シナリオ」とは
トランプ政権下では「スパイウェア規制」が撤廃?
バイデン政権に対し、「MAGA」(Make America Great Again)を掲げるトランプ前大統領による新政権のもとでは、おそらく国際連携よりもアメリカファースト・自国優先主義が取られるだろう。エネルギー、運輸交通、通信、国防など重要インフラに関する政策、優先度は大きく変わらないが、各論部分となるそれぞれの政策やアクションでは変化が予想される。 すでに外交・貿易問題では、保護貿易主義に寄せた主張が展開されており、中国製品を筆頭とする海外製品への関税強化に、各国は警戒を強めている。移民を含めてメキシコからの製品輸入も関税を強化する方針を示しているので、アメリカ本土に直接富や雇用をもたらさない企業は、今と同じビジネスを続けられる保証はない。 こうした民間ビジネスにおける自国優先主義は、サイバーセキュリティ産業にも適用されるだろう。AI規制の緩和やメディア政策へもグローバル連携より、自国産業優先が予想される。前述のスパイウェア規制については、ビジネスとしてのニーズに加え、アメリカの諜報活動、テロ対策のツールとしても規制が解除される可能性がある。 ソフトウェア業界も、バイデン政権下の民間規制、CISAの「セキュアバイデザイン」がビジネスを阻害するリスクとして捉えている面がある。もちろん、必要な規制やセキュリティ確保そのものを否定しているわけではないが、政府は民間事業に過渡に干渉すべきでないというのが、アメリカ保守層の考え方だ。
ITベンダーが直面し得る「新たな課題」
トランプ政権は、原則として小さい政府や規制緩和といった保守戦略を実践してくると思われる。ビジネスはしやすくなる方向だが、サイバーセキュリティに関しては難しいかじ取りになりそうだ。 たとえば、AIに関する規制が緩和されればそれだけ市場は活性化するが、同時にサイバー攻撃や悪用は増えるだろう。企業は対策コストを増やす必要がある。ソフトウェアベンダーは、セキュリティ品質が必要以上に求められなくても、製品の安全性はもはや必須機能要件ともいえ、手を抜くわけにはいかない。 セキュリティベンダーは、スパイウェアや諜報活動ソリューションなどの新ビジネスが拡大すると喜んでばかりではいられない。これらの活動をビジネスとすると、自社の情報管理が難しくなる。管理コストや政府調達要件のための投資が必要なだけでなく、業界との情報交換・情報共有も制限しなくてはならない。 セキュリティ対策・ソリューションにおいて、情報連携や共有がうまくできないと、十分な効果が期待できない。対策効果が期待できないセキュリティ製品など、誰も買わないだろう。