美は足元に宿る。日本の住宅事情と相性抜群なオランダ家具を見に『FILM』へ。
東京都内の駅名を「あ」から五十音順に選出し、その駅の気になる店やスポットなどをぶらりと周っていく連載企画「東京五十音散策」。「か」は蒲田に続き学芸大学へ。
物件サイトをたまに覗いてはいつか住んでみたい……と妄想している広々とした間取り。でももし今の家の広さに満足していなかったとしても、その空間でなにができるかというセンスを養うための環境と捉えれば、そこまで悪いもんじゃないかも? 東京五十音散策 学芸大学④
学芸大学から目黒駅方面へ徒歩20分、目黒通り沿いにある『FILM』でオランダ家具の魅力を知ると可能性が広がった。ここは、オランダを中心とするヨーロッパ諸国で買い付けたヴィンテージ家具が揃うインテリアショップで、日本ではあまり聞き馴染みのない「ダッチデザイン」と呼ばれる堅牢でシンプルな造りのモノが豊富に並ぶ。
店主の岩舘亮太さん曰く、当ジャンルの醍醐味は「素材の組み合わせとディテール」。例えばキャビネットひとつとっても如実に表れている。北欧家具でよく使われるような質の良いチーク材をボディにしつつも足はシャープなメタルを組み合わせていたり、同じ木材でも足だけアールになっていたりと、総じてひと捻り効いたデザイン美が見受けられるのだ。そんな軽やかな印象を持つオランダ家具は、ミニマムな間取りにスッと馴染むのだという。
しかも、ここでは仕入れたものをそのまま出すのではなく、共同経営をしているリペア職人の浅井洋平さんがこれまで約20年間収集してきた大量のヴィンテージネジを駆使し、自社工房で締め直しやグラつきの修復、サンディングといったリペアを施してから店頭にインする。当然コンディションは新品のように抜群。いわゆるヴィンテージといっても明るい雰囲気で手に取りやすい。
面ではなく、素材と輪郭。オランダの街並みを連想してしまうくらい美しくレイアウトされた店内を見ていると、それを意識してチョイスすることで空間の印象を大きく変えられるのだと実感できる。人生然り、部屋もまずは家具の足元から見直すのが吉なのかも。
インフォメーション
『FILM』 もともと同じ職場で働いていた岩舘さんと浅井さんがタッグを組み、2019年にオープン。メイン写真の高級ソファベッドのほか、シェルフ、テーブルなどの大型家具は同ビルの2Fに、モデルルームのような1Fでは、ドイツで仕入れたヴィンテージ花器などお手頃なインテリアが鎮座している。リペアが施された順に毎週入荷するのも嬉しいポイント。 ○東京都目黒区中町1丁目6-14 宝恵マンション 1F /2F ☎︎03・5734・1011 12:00~19:00 水休 photo: Hiroshi Nakamura, text: Fuya Uto, edit: Toromatsu
POPEYE Web