「マイナンバー×健康保険証」一体化で起きる大論争、解決に導く“3つの選択肢”とは
いよいよ、マイナ保険証による健康保険証の新規発行停止が2024年12月2日に始まった。これに対し、世の中の言論は混乱状態である。立憲民主党は、2024年11月12日に保険証廃止延期法案を衆議院に提出した。本法案は、マイナンバーカードと健康保険証の統合を受け、「健康保険証の廃止を期限を決めず延期せよ」という内容である。マイナ保険証に一本化するまでの経過措置についての議論も混乱し、収れんする見込みがない。本記事では、“この不毛なマイナ保険証論争”を整理しつつ、この問題の対応策を検討する。 【詳細な図や写真】健康保険証とマイナンバーを一体化するメリットとは?(写真:吉原秀樹/アフロ)
説明できる?健康保険証とは「どんな会員証」か?
そもそも、今回の議論に登場する「健康保険証」とはどのようなものなのか、あらためて説明したい。 保険資格というのは、医療保険者(健康保険組合、全国健康保険協会、国保の市町村区、共済組合等)で管理されており、民間企業であれば被用者を管理している企業経由で、国民健康保険であれば市区町村経由で、それぞれの医療保険者に有資格者として登録される。保険料は社会保険料や国民健康保険料として、もれなく徴収される国民皆保険という素晴らしい制度である。 消費財に例えるならば、健康保険証は、医療という商品を7割引き(高齢者は最大9割引き)で購入できるゴールド会員証である。おまけに月々の購入額が8万100円(注1)を超えると、高額医療費制度によるキャッシュバックも受けられる。つまり、買えば買うほど購入者に現金が還元されるという世にも希な会員証である。 注1:所得によって異なり、住民税非課税世帯なら上限がわずか3万5,400円/月となる。
「健康保険証×マイナンバー」一体化すべき理由
この、すばらしいゴールド会員証を、他人に貸したり、偽造して他人に売ったりしたらどうなるであろうか。 もちろん、なりすまし受診をした借り手は7割引きの恩恵を受けられるから大喜び。さらに、保険薬局でゲットした医薬品や湿布薬を転売すれば、転売利益が懐に入る。貸した方も、借り手が沢山使ってくれるほど、月々のキャッシュバックで逆にお金が入ってくる仕組みである。 さらに、マイナ保険証と同等の効果を有する資格証明書や紙の保険証の2枚持ちを許すとどうなるか。2枚目を他人に売ったり貸したりが、保険証を偽造せずとも簡単にできるようになる訳である。これだけのインセンティブがあれば不正利用をする人が一定数存在してもおかしくない。 社会サービスのデジタル化によって利便性と効率性を高めると同時に、犯罪を抑止するための社会基盤を構築することも必要である。これに必要な要素が、本人確認の厳正化と、デジタルサービスの犯罪耐性を高めることである。 保険証は、健康保険適用という金銭的実利が伴うものであるから、厳正なものでなくてはならない。不正利用が拡大したら国民皆保険制度そのものが成り立たなくなる。 ゆえに、筆者は、マイナンバーカード(正確には、公的個人認証による本人確認)と健康保険証の一体化によって不正利用を防止する社会基盤を構築するのは当然だと考える。さらに先に控える運転免許証の一本化は、本人確認書類としてひんぱんに使われる運転免許証の偽造犯罪を減らすために必須だ。