「マイナンバー×健康保険証」一体化で起きる大論争、解決に導く“3つの選択肢”とは
すべてを解決に導く「3つの具体策」
それでは、どうすれば良いのか。まず、圧倒的な利便性を付与して、「マイナカードを使っていないなんて、なんて時代遅れの人間なんだ」と思う層をマジョリティにする策が必要だ。 マイナカードを利用すると利便性が向上するようなサービスを開発することを公共サービスや民間サービス業者に義務付ける(努力義務でも良い)法案を作ることだ。これに、国がしっかりと開発補助金予算をつけ、ディベロッパーが集まってくるようにすることも必要だ。 保持を強制するのではなく、保持していることによる利便性の創出をサービス事業者側に義務付けるのである。これならば反対派の人達も文句は言えまい。実際に、このサービスを使うか否かは国民の判断だからであり、強制はしていないからである。 すでに、「マイナカードとスマホがあれば、〇〇が簡単にできる」というサービスは生まれている。これを促進するのである。転居手続きとか、サービス利用開始時のアカウント開設とか、古めかしい印鑑証明書が必要となる手続きなど、民間部門や公共部門にアイデアを出させれば沢山出てくるだろう。来春には、物理的なマイナカードを持ち歩く必要はなくなり、スマホ1台で済むようになる。カードを紛失するのが怖いから反対と騒いでいる人たちは、文句を言えなくなるだろう。 公共サービスの本命はマイナカードによる電子投票なのだが、残念ながら今の政治体制で、選挙の仕組みに手を出して自分の首に鈴をつけようという政党は当分出てこないだろう。 2番目の策は、アンチクライム機能の実装を、健康保険組合に義務付けることだ。そして、健康保険証の貸し借りや売買などの不正行為(の疑い)を検出するシステム開発に国が予算をつけて支援することである。多くの健康保険組合が赤字転落している状況において不正利用額を減らすことは健康保険組合にとってもメリットがあるはずだ。 そして、個人情報は徹底して匿名化をしつつ、マイナ保険証vs資格確認書別に統計数値を公表し続けることである。不正利用が多い医療機関は公表すべきだろう。 クレジット業界でも毎年、日本クレジット協会が不正利用の比率を公表している(日本クレジット協会)。さらには、不正利用の検知スピードを速めるために、グレー取引の即時情報共有の仕組みも立ち上げる予定だ。民間の努力に比して、健康保険サービスシステムだけが例外であって良い訳がない。繰り返すが、健康保険証は世にも珍しいゴールド会員証なのだ。 不正利用に関しては既に研究事例が存在する。千葉大学の里村教授(平成15年)によって保険証認証システムの有効性も確認されている。しかし「不正請求が年間600万件、その処理のための費用は1,000億円を超える」というデータに裏付けがあるのか無いのか、水掛け論が続いているのだ。これに終止符を打つ意味もある。