資産運用より「投資される側」になれ、10万部突破した『きみのお金は誰のため』著者が語る「経済の捉え方」の深さ
経済の捉え方には「お金」と「働く人」の2種類がある
お金は必要不可欠なものだが、お金についてどれだけ深く考えたことがあるだろうか。発売2カ月余りで10万部を突破した『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社刊)の著者・田内学氏は、元ゴールドマン・サックス金利トレーダーで、現在は「お金の向こう研究所」代表、社会的金融教育家・作家として活躍している。2023年11月に川越市立初雁中学校で行われた田内氏の講演から、話題本のエッセンスと「お金」を考えるヒントを紹介する。 【画像で見る】<3択クイズ>Q「日曜日に働かなくてもいいように皆がやるべきこととして、ふさわしくないものは? お金があれば生きていけるのでしょうか。登場人物の中学2年生の優斗くんは「将来は、年収の高い仕事につきたい」と考え、投資銀行勤務の七海さんは「生きていくにはお金に頼るしかない」と考えています。おそらく皆さんもそう思っているのではないでしょうか。しかし、謎の老人ボスはこう言います。「お金自体に価値はない」「お金で解決できる問題はない」「みんなでお金を貯めても意味はない」。いったいどういうことでしょうか。まずは、3択クイズを出します。ぜひ考えてください。 正解はAです。「どういうこと?」と思う方も多いでしょう。もし「学校で勉強できるのは誰のおかげ?」と問われたらどう答えますか。もちろん「親など保護者のおかげ」と答えるでしょう。それは、「お金」の出所が保護者だからです。 しかし、もう1つの考え方があります。それは勉強を教えてくれるのは先生だから「先生のおかげ」というものです。こちらは働く「人」に着目しています。 世間では「お金」に注目した経済の捉え方が一般的です。例えば、働いて給料もらう→洋服を買う→ボーナスもらう→旅行するというように、洋服が買えるのは「過去に働いたから」で、お金をもらうと嬉しいのは「将来使えるから」と、私たちは自分の時間軸で経済を捉えています。 一方で、働く「人」に注目した経済の捉え方は、私たちが今生きている空間=社会の中で、働く人がいるから生きていけるという考えです。私たちは1人では生きていけず、毎日、数千、数万の人に支えられています。先ほどのクイズは、自分1人なら「A平日に働いてお金を貯めておく」もふさわしいですが、周囲の空間=社会のことを考えれば、日曜日に働く人がいなくなりますから生活が回りませんよね。ですから、皆がやるべきこととしてはふさわしくないのです。実は年金問題も同じで、一口に多くの人がお金を貯めれば解決する問題ではありません。皆がお金を使わなければ景気が悪くなり、給料も上がらず、年金の掛け金を収められません。お金を考える際は、働く「人」に注目して「社会」を見つめることも重要なのです。