資産運用より「投資される側」になれ、10万部突破した『きみのお金は誰のため』著者が語る「経済の捉え方」の深さ
将来は「2択の選択の積み重ね」で決まる
さて、ここからは、なりたい自分の見つけ方を考えます。皆さんにはやりたいことがいろいろあるでしょう。そして、その実現には多くのハードルがある。そこで私の経験から、やりたいことを実現する2つの考え方をご紹介します。カッコの中に何が入るでしょうか。 (1)( )%以上の確率ならトライする価値アリ (2)( )を見つけて仲間を増やす 私は、0.1%以上の確率ならトライする価値アリと考えています。0.1%は1000分の1です。テストで1000人中1位になるのは難しいことですが、1000通りから1通りを選ぶのはそれほど難しくないはずです。自分の人生は、これからの選択次第でいくらでも変えることができます。右にいくか、左にいくか。やるかやらないか。人生でこの2択を10回繰り返すと、210=1024通りの未来が出現します。ここから1通りを選ぶわけです。 何かに挑戦したいなら早いほうがいいのですが、多くの人は頭でわかっていてもなかなか行動しようとしません。しかし、将来は2択の選択の積み重ねで決まるのです。 私が社会人になるときの大きな選択は、就職と結婚でした。就職が決まり、結婚を考えたとき、初めの選択として相手に連絡を取りました。結果、今は結婚して子どももいますが、あのとき連絡しなければ未来は変わっていたかもしれません。途中で失敗しても、やることを選択し続けていけば、やりたいことは実現するのです。やる気さえあれば、決断さえできれば、誰にでもできることなのです。
お金はあくまで道具、「社会で働く」ことは仲間を増やすこと
では、「( )を見つけて仲間を増やす」はどうでしょう。さきほど、お金は「誰かに働いてもらうチケット」と言いましたが、お金がない時代、困ったときに助けてくれるのは周りの仲間でした。一方お金のある今は、仲間でない人にも協力してもらえます。ただし、これはあくまで“協力してもらえるかもしれない”であって、今の時代も仲間を増やすことは大事です。 仲間の作り方と聞くと、SNSのフォロワーを増やすことを考えるかもしれません。しかし、助けてくれるフォロワーはごく一部です。また、愛してくれる人、愛する人とは少なくとも助け合うことができます。私の好きな言葉に「経済とは愛の節約である」というのがありますが、皆さんが家に帰ってごはんを食べられるのも、愛してくれる親がいるからです。しかし、愛で働ける対象は少ない。あくまで愛は限定的であり希少なリソースです。では、仲間はどんなときに増えるのでしょう。それは共通の目標があるときです。学校で言えば、目標を持った部活も団結します。 皆さんが「年収の高い職業につきたい」という目標を掲げても、仲間はできません。私が「本を書いて印税を稼ぎたい」と言って、どれだけの人が応援してくれるでしょうか。しかし、「本を書くことで社会の課題を解決したい」と言えば、興味を持つ人が出てきます。自分がやりたいこと、自分の価値・興味は何か。それを考えて実現させる近道が、やりたいことを仕事にすることです。周囲の人と共通の目標は何か、どうすれば自分を応援してもらえるか。誰を幸せにしたいのか。誰を味方にしたいのか。そこからなりたい自分も見えてくるはずです。 万が一仲間だけでどうにもならないときは、お金の力を借りればいいのです。奨学金などで借金して大学に行ってもいいし、自分のやりたいことを説明して投資家に投資してもらうのもありです。社会のために働くということは、仲間を増やすことでもあります。お金はあくまで道具です。皆さんには、お金を道具としてしっかり使いこなしながら生きてほしいです。 (文:國貞文隆、注記のない写真:Rina / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部