実は老後は《月10万円》あれば問題なし…安らかに自宅で最期を迎えるために「本当に必要なおカネ」をご存じですか
自宅介護にかかる費用
自宅で穏やかに旅立つためには、どれくらいの金額がかかるのか。具体的に見ていこう。前章で紹介した転倒防止用の手すりは介護保険で格安で設置することが可能だ。 「1階のみを生活空間として、延べ床面積が一般的な35坪程度である場合、リビング、寝室、トイレ、浴室などの生活動線に手すりを取り付けたら、1万5000~2万円(1割負担の場合)が目安となります。トイレのドアの取り外し、自宅内引っ越しも家族を頼れば、おカネはかかりません」(前出・一級建築士の田中氏) あとは浴室のドア交換だが、こちらも3万円前後で改修を依頼できる。 その他、終の棲家を作るために最低限必要な福祉用品と費用は表に示した。一見、高そうな介護用の電動ベッドは月額6040円から借りられる。段差を解消するためのスロープもほとんど500円以下なので、生活動線のバリアフリー化に役立てていきたい。 レンタルできる福祉用品が一覧できるカタログは、取り扱っている企業の電話番号を役所に教えてもらって自宅に取り寄せよう。または、かかりつけの病院に相談して、コピーをもらうこともできるから、気軽に相談していい。 以上、解説したように前章で紹介した終の棲家づくりは介護保険を使うことによって、2万円でできる。また、保険を使って月々1万円前後で福祉用品のレンタルをすることで、自宅をより快適な空間にすることも可能なのだ。
月10万円あれば大丈夫
続いて、訪問医療と訪問介護はどれくらいの費用がかかるだろうか。前出の武藤氏が解説する。 「こちらも介護保険が使えます。要介護5で使える介護保険の上限がおよそ36万円。1割負担であれば3万6000円程度の費用で、朝昼晩でヘルパーに入ってもらうことができ、食事や排泄、清潔維持などのサービスを受けることができます。 訪問診療、訪問看護を入れても、だいたい5万円前後に収まる場合もあります。そこに福祉用品のレンタル代、水道光熱費が乗っかってくるわけですが、それでも10万円以内で収めることも可能です。ケアマネに相談すれば経済状況を見ながら無理のない範囲で組み立てることができます」 旅立つ間際は病状が進行し、痛みが出てくる場合もあるだろう。痛み止めの薬や点滴などの緩和ケアも在宅で3万~5万円で受けられる。味気のない病院や施設の月額費用よりはずっと安い。 家は病院や施設と違って、思い切りワガママになっていい場所だ。むしろ、そうしたほうが最高の最期を過ごすことができるのだ。