「ママ、大好き」…数時間後に校庭で倒れた娘、教師が知らなかった心停止のサイン 〝使われなかったAED〟を教訓に、小学生からできること #ニュースその後
「ASUKAモデルのおかげで助かった」
寿子さんや桐淵さんは事故の教訓を各地で講演し、ASUKAモデルも全国の教育現場に伝わりました。 講演や救命講習で明日香さんのことを知った人のなかには、実際に「AEDを取りに走った」「心肺蘇生をした」という人もいるそうです。子どもたちが救命を手助けしたケースもありました。 寿子さんは「数年前、講演終わりに『僕、ASUKAモデルのおかげで助かったんです』と声をかけてくれた人もいました」と振り返ります。 「胸骨圧迫をされたときの痛みが少し残っているけど、『これが自分が生きている証』という言葉を聞いて涙が出ました」 9月30日は明日香さんの「命日」であるとともに、多くの命を救うASUKAモデルの誕生日「命の日」と考えるようにもなりました。 「命を守る取り組みが続いていく限り、明日香はみなさまの心の中に生き続けていくのだと思います」 さいたま市教委は、毎年9月30日を「明日(あす)も進む いのちの日」に制定し、AEDの一斉点検や場所の確認を続けています。
AEDを設置する学校は95%
2004年に医療者ではない一般の人も使えるようになったAED。現在、全国の街中に推計で69万台が設置されています。 市民がAEDを使って救った命は、解禁翌年2005年の年間12人から、2022年は618人と大幅に増加。累計約8000人となりました。 総務省消防庁によると、2022年、誰かの目の前で突然心臓が止まり、倒れた人は約2万9000人。1カ月後に社会復帰できた人は、蘇生を受けないと3.3%でしたが、受けた場合は8.8%、AEDの電気ショックが使われた場合は42.6%でした。 しかし、目撃された心停止のうち、実際に電気ショックが施されたのは約1200人で、わずか4.3%にとどまっています。 心臓突然死の約70%は自宅で起きているほか、いざというときにAEDの場所が分からない、とっさの救命処置ができないといった理由が考えられるそうです。 心臓が止まった場合、AEDによる電気ショックが1分遅れるごとに救命率は約10%ずつ低下します。119番通報をしても、すぐに救急車が来るとは限りません。2022年現在、救急車の到着時間は全国平均で10.3分。居合わせた市民による救命処置が命を救うカギとなります。 一方、多くの学校現場には救命に必要な「目撃者・協力者・AED」がそろっています。文部科学省の2021年度の調査によると、AEDを設置している学校は95%に達しました。 日本学校保健会の調査によると、2012~2016年度に小学生32人、中学生 54人、高校生61人がAEDによる電気ショックを受け、そのうち小学生は70%以上、中高生でも60%以上が後遺症を残すことなく復帰したそうです。 心臓病を指摘されていた児童生徒の割合は30%程度で、持病がなくてもリスクはあります。運動中に起こることが多く、救急体制の整備が重要になってきます。