性教育の普及活動に取り組んでいるモデル鈴木えみ「私たち昭和生まれの“普通”は本当に必要か考えたい」
性教育の普及という活動を通して、子どもたちのよりよい未来の構築について真剣に取り組んでいる鈴木えみさん。このインタビューでは、昭和生まれの世代と今の10代、20代との感覚の違いをどう埋めていくかを考えながら、鈴木さん自身の内面にもフォーカス。今後の活動の展望などについても語っていただきました。〈yoi3周年スペシャルインタビュー〉 鈴木えみさんの写真をもっと見る
■違いに直面したときに柔軟性を持って対応できる大人でいたい ──今、若い世代の休職や離職率の高さで頭を悩ませている昭和生まれの世代も多いと思います。鈴木さんは先日39歳を迎えられましたが、これからの社会、そういった世代間ギャップはどうやって埋めていけばいいと思われますか。 鈴木さん もし私が彼らの親なら、やりたくないのならやめてもいい、と言うと思います。これは正解不正解っていうのはなくて、完全に感覚の差なんですよね。先輩たちの“普通”と、若い世代の感覚が違ってしまっている。そこはコミュニケーションを通じてお互いが歩み寄るしか答えがない。 私自身は、“僕たちはこういう感覚なんです”と言われたときに、それを受け入れられる柔軟性を持った大人でありたいと思っています。年齢を重ねるとやっぱり自分の中でデータ量が増えていってしまって、99%こうなるだろうとわかってるがゆえに頑固になっていくと思うんですけど、そこに凝り固まりたくはないなって。 年齢を重ねても新しいことをつねに吸収していきたいと思っているし、幸い私の周りには柔軟性を持った多様な先輩たちが多いので、彼らを見習っていきたいなと思います。 今年(2024年)の夏、娘がLAのサマースクールに参加したのですが、いちばんインスパイアされたのが、みんなが自分軸ですべてのことを進めているという点だったそうなんです。いい意味で他人に干渉せず、もちろん誰かに意地悪することもなく、自分の機嫌を上手にとっている姿に彼女は自由を感じたそうです。 一人一人がうまくいっているから、結果として物事全体もうまく回っている。私たち昭和生まれの世代が“普通”と思っている我慢や忍耐も本当に必要なものなのか、一度立ち止まって考えてみてもいいのかもしれないですね。 ──昭和生まれの世代がコミュニケーションと思っていても、怒られた、注意されたと思ってしまい心折れてしまう人も多い気がします。 鈴木さん それは確かにあるかもしれませんね。私は娘が幼少期に出会った先生から、“しなり力”を身につけたらいいと言われたことがあって。何か怒られたり注意を受けたときにしなやかにそれを受け止め、「そういう考え方もあるんだと」理解して再起する力。それを養うためには、再起してその先に自分で掴んだ成功体験が必要なんです。 例えば普段の勉強でも、試験でいい点数が取れたら、高得点を褒めるのではなく、いっぱい勉強して自分の力で結果を出せたという過程を褒めてあげること。そうすることでチャレンジする気持ちに対して背中を押してあげながら、逆境に対応する “しなり力”を育んであげたいなと思っています。 娘には、どんな場面においても言いたいことをちゃんと言える素直な人になってほしいです。その上で、結局は誰しもが社会の中で生きていくわけなので、コミュニティの一員として何かポジティブな貢献ができる人であってほしいですね。 彼女は10歳で、まだまだ自分へのフォーカスが強い年齢でもありますが、これからもっと大きな社会の中でどう成長していくか、課題でもあり、楽しみでもあります。 ■いいと思ったことはシェアしたいし、あったらいいなと思うものは作りたい ──鈴木さん自身は、10年前と今で考え方は変わりましたか? 鈴木さん 10年前というと娘を産んですぐですね。当時はまだ幼児教育まで考えが及んでおらず、子どもを取り巻く“食”に関することに興味が出てきた頃だったと思います。今活動している性教育に関しても本格的に考え始めたのは、娘が小学校で集団生活を送るようになってから。 子育てを通して子どもたちの世界を見ていると、どれだけ小さくても結局は社会の縮図だなと思うんです。その悩みのほとんどは人間関係。小学生も大人も悩んでることの本質は同じだったりする。ということは、幼少期の環境が変わったら、大人になっても同じことで悩まずに済むんじゃないか、って思うんですよね。 個人で言うと、自分で言うのもなんですが、すごく心が広くなった気がしています(笑)。物ごとってやっぱりとらえ方なんですよね。どんな出来事も一歩引いて見ると、大抵のことはなんてことないと思える。そんなことよりも、楽しいって感じる時間を少しでも増やすことに、今は集中したいですね。 ──家族のこと、子どもたちの未来のことについて語る鈴木さんは生き生きとしていますね。 鈴木さん 自分自身を語るより得意かもしれませんね(笑)。私、自分の話となると、私の日常のこと聞いて本当にみんな面白い?とか、そんなにネタないけど!?って思っちゃうんですよ。ただ、自分が本当にいいって思ったことはみんなにおすすめしたくなるし、シェアしたくなっちゃう。 夫や友人から、「えみはいつも『見て見て~』って携帯で何かを見せてくる」って言われますが、それはもう昔からのクセみたいです。性教育に関しても一緒で、何でないんだろうって思うものは作りたくなっちゃうし、みんなに知ってほしい知識はSNSやメディアを通して、発信したくなる。 今は子ども用の生理用品の開発もしたいと思っていて、そういうアイテムがあることで思春期の不快な経験や思い出が少しでも軽減されたらいいなって思っています。 ■人生設計はしないタイプ。ただアイディアが思い浮かんだら素早く行動に移します ──来年40歳になる鈴木さん。ご自身のこれからのことで、大事にしたいことや目標はありますか? 鈴木さん 実は自分の人生設計って考えられなくて。意外と行き当たりばったりなところがあるんです。その代わり、ある日突然バンっとやりたいな、いいなと思うことが出てきて、そこから速いスピードでカタチにしていく感じです。だから全然計画的じゃないんですよ。そのぶん日常的にアンテナをはっていますし、日頃から種をまいておくことは大切だと思っています。 性教育に関して同じ想いをもった「Family Heart Talks」のメンバーがあっという間に集まったのも、周囲に思いを口にしていたから実現したことですし、やっぱり言葉にすることってすごい大事だなと思います。いいなと思ったら行動する、生き方としてはかなりシンプルだと思います。 性教育の活動もすごくシンプルで、我が子が生きる未来について考えた結果の行動なんです。性被害に遭う方を減らしたいのはもちろん、加害者となる人を生みたくないという思いです。娘の世代が平和にハッピーに生きれる世の中にちょっとでも貢献したいというだけ。 50年後、100年後にはこういう感覚が誰にとっても当たり前になって、“性教育”って言葉すら存在しなくなったらいいなと思っています。 ▶鈴木えみインタビュー「性教育は、早ければ早いほどいいと思っている」もチェック! モデル 鈴木えみ 1985年9月13日生まれ、京都府出身。14歳で『Seventeen』の専属モデルとしてデビュー。『MAQUIA』をはじめ多くのファッション誌で人気モデルとして活躍を続ける。自身のブランド「Lautashi」ではファッションデザイナーとしても活動。一児の母でもある。2024年には性教育の普及を目指したサポート団体「Family Heart Talks」を発足。子どもたちにとってのよりよい未来を目指して、イベントなどを行っている。 コート(メンズ)¥968000、スカーフ(メンズ)¥203500、シャツ¥228800/ともにジル サンダー バイ ルーシー アンド ルーク・メイヤー(ジルサンダージャパン) 撮影/Jun Yasui(eightpeace manegement) ヘア&メイク/kyoko スタイリスト/鈴木美智恵 構成・取材・文/前野さちこ