”モンスト”IT会社と写真判定”老舗”が組んで競輪界にムーブメント…スポーツケイリン「PIST6」誕生の理由と期待される価値
写真判定の老舗が抱いた危機感
競輪の既存イメージにメスを入れたのは「株式会社PIST6」。千葉競輪を主催する千葉市と包括委託契約を結ぶ「株式会社JPF」と、デジタルエンターテインメント事業で知られる「株式会社ミクシィ」の合弁会社である。JPFの前身は高感度カメラの会社で、その技術を戦後復興の貴重な財源となった公営競技に生かし機械測定による写真判定業務を手がけてきた。 創業は1939年で“幻の五輪”と呼ばれる1940年東京五輪の写真判定研究に従事した歴史も。とりわけ競輪との関わりは深く、千葉を含む全国5競輪場の運営を各自治体から委託されている。2017年12月に閉場した千葉競輪場跡地に巨額を投じてドームを建てたのもJPFだ。 PIST6を立ち上げた理由を、JPF常務取締役で株式会社PIST6の代表取締役社長を務める鈴木千樹氏はこう語る。 「JPF社長の渡辺俊太郎は以前から競輪事業だけでなく自転車競技全体の底上げを訴えてきました。日本生まれで、本来お家芸であるはずのケイリンが五輪で勝てないのはおかしい。それは国際ルールと日本の競輪のルールに乖離があるのが原因。日本で国際規格のレースを開催してスポーツとしてのケイリンを発展させないと、車券購買層の高齢化で競輪は先細りになるという危機感を持っていました。そこで公営競技の競輪とスポーツのケイリンの融合に2013年頃から本格的に動き始めたのです」 ちなみに五輪のケイリンで過去にメダルを取った日本人は、2008年北京大会で銅メダルを手にした永井清史ただ一人である。 競輪とケイリンではトラックも違う。競輪はコンクリート製の屋外走路を走るのに対し、ケイリンは国際規格に則った板張りの屋内木製バンクを走る。ヨーロッパではこの木製バンクがスタンダードだが、日本国内には3カ所しか木製バンクがない。 そして新型コロナ禍が収束し、海外の選手が来日できるようになれば、世界トップクラスのPIST6参戦が見込め、日本の選手たちは国内にいながら国際基準の環境で競技力を磨くことができる。その外国人選手にも参戦のメリットがある。PIST6では毎週土日曜の2日間で一次予選、二次予選、準決勝、決勝を行い優勝すれば140~150万円を手にできる。対する海外のトラックレースは、世界ナンバーワンを決める年1回の世界選手権で40万円程度と驚くほど少額なのだ。