”モンスト”IT会社と写真判定”老舗”が組んで競輪界にムーブメント…スポーツケイリン「PIST6」誕生の理由と期待される価値
競輪に新たなムーブメントが起きている。競輪の新ジャンルである「PIST6 チャンピオンシップ(略称:PIST6=ピストシックス)」が千葉競輪場跡地に総工費約70億円をかけて新設された「TIPSTAR DOME CHIBA(ティップスタードーム チバ)」で開幕している。PIST6は従来の競輪とは異なる、まったく新しい自転車トラックトーナメントだ。 プレシーズンレースが昨年行われ、その大半が新型コロナ禍の影響での無観客開催だったにもかかわらず開幕初日には3億5000万円を売り上げるなどの話題を呼んだ。 車券販売は全てインターネット投票。そのため会場に車券売り場はなく、オンライン投票アプリの「TIPSTAR」(ティップスター)で購入する仕組みだ。競輪界のインターネット投票システム導入は、公営競技の中で後発だったが、新型コロナ禍の巣ごもり需要でオンライン投票が伸び、2021年度の車券総売り上げは前年度比135.1%増の9199億7532万300円にのぼった。競輪の総売り上げは8年連続で右肩上がりとなっている。 通年で土日曜を中心に年間100日開催されるレースは、従来の競輪ではなく、五輪のトラック種目「ケイリン(KEIRIN)」の「250(ニーゴーマル)競走」。1周250mを6車立てで6周回し着順を競うスタイルで、ギャンブル性よりスポーツ色を前面に打ち出している。 日本で主流の競輪は1周333mを6周回、500mなら4周回を9車立てで走り、レース展開は選手の出身地や師弟関係による「ライン」と呼ばれる並びや駆け引きが鍵を握る。いかにラインを読むかが車券予想の肝になるが、選手のバックグラウンドを知らない初心者にはわかりにくい。 その点、250競走はラインが禁止され、選手個々の走力で真っ向勝負するためシンプルだ。また車券も競輪にはない1着のみを当てる「単勝」を導入して車券購入のハードルを下げた。わずか6台のレースでは、車券に旨味がなさそうに思えるが、レース中の位置取りが重要となり番狂わせも起こる。 例えばプレシーズンレースの昨年10月3日の5レースの準決勝Bでは、1番人気が5着に沈み、6番人気が勝ったことで単勝は5700円の高配当となった。1着から3着までを着順通りに当てる3連単では驚きの30万3970円がついた。1着は大穴だったが、2着は2番人気、3着は3番人気と順当だったにもかかわらず10万車券が出たのである。 PIST6導入の狙いは、高齢化する車券購買層への若い世代の取り込みがある。 競輪ファンはシニア世代が多く、「レースの開催日程は年金受給日に合わせて組まれている」と揶揄されるほど。加えて全国43カ所の競輪場も老朽化し、ギャンブル色も強いため、若い世代に敬遠される「汚い」「怖い」「オヤジくさい」の3大イメージが拭えない。 しかし、PIST6はそれらのネガティブ要素を一新した。TIPSTAR DOME CHIBAはモダンで清潔感があり、本格的な音響照明装置も完備。大迫力の音楽とレーザー光線、火炎やスモークを駆使したド派手な演出が可能だ。来場者に子ども連れのファミリーや若いグループ、カップルの姿が目につく。