猫も感染!? 犬だけじゃない、蚊が原因の「フィラリア症」。知らずに感染していることも!
実は猫もフィラリア症の危険に晒されている
蚊は犬も猫も区別なく吸血するため、フィラリア症の動物の血を吸った蚊が次に猫の血を吸えば、ミクロフィラリアが猫の体内に入る可能性がある。実際、フィラリア症の犬は数を減らしたとはいえ、日本全国にいるため、61~90%の猫がフィラリア症の動物の血を吸った蚊に刺された経験をしている可能性があるという見方もある。 ただし、猫は犬糸状虫の本来の宿主ではないため、ミクロフィラリアが血中に入ったとしても、必ず感染するとは限らない。体内でのフィラリア症の成長スピードも、7~8ヵ月と遅く、ほとんどの場合成虫になる前に体内で死んでしまう。もし成虫まで成長できたとしても、成虫の寿命も2~3年と短く、寄生数も1~3隻程度で、多くても6隻以下だ。血中にミクロフィラリアが出ることも稀だと言われている。 しかし、このようにミクロフィラリアが体内に侵入しても、なんの症状も出ない猫もいるなかで、深刻な症状が現れてしまう猫もいる。
最悪、突然死する可能性も
猫への健康被害も、犬と同じく呼吸器に起こる。猫への呼吸器への障害は、2段階ある。 第1病期は、成虫になる前から起こる。ミクロフィラリアが心臓に寄生しようと移動する際に呼吸器症状が起こるもので、犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD : heartworm-associated respiratory disease)と呼ばれる。これらの症状は犬には起こらず、猫にのみ発現する。咳をする、呼吸困難、嘔吐などが主な症状だが、28%は無徴候とも言われている。これらは肺の血管内の免疫反応によって起こると考えられている。 第2病期は、運良く生き延びて心臓で成虫になった犬糸状虫が死亡するときに起こる。犬糸状虫の成虫は、自分が猫の免疫によって攻撃されないような物質を出して免疫反応を免れているが、虫体が死亡するとその物質が出なくなり、重度の炎症や血管の塞栓症が起きる。その結果、急性肺障害や20%くらいの割合で突然死も起こりうる。たとえこの時、猫が生き延びたとしても、体に受けた損傷は残ってしまい、慢性的な呼吸器の症状を呈するようになる。 感染自体は、どの年齢の猫にも起こりうる。蚊が媒介する病気のため、外に行く猫のほうが、完全室内飼育の猫よりもリスクが高い。 最悪なケースを書いたので怖くなった方も多いかもしれないが、猫は基本的に犬糸状虫症の感染に耐性があるため、多くの猫は症状がないか、あっても一時的な症状が出るだけで終わるため、犬糸状虫によって死亡する猫はそこまで多くはないと考えられる。しかし、後述する通り診断が難しいため、実際の割合は不明である。 猫でフィラリア症を疑う症状として、食欲不振や体重減少のほか、咳が出たり、呼吸困難や呼吸が早くなることがある。また、食事とは関係のない嘔吐、胸水や腹水がたまる、神経症状がある、喀血や突然死、などがあるが、どれも他の病気で起こりうる症状なので、「この症状があったらフィラリア症」と断定することは難しい。