「演じるうえで年齢や性別は意識していないかも」――朝ドラ“空さん”役で話題の40歳ボーダーレス俳優・新名基浩の動力は
年齢も性別もまるで自在なのかと思わせる俳優がいる。昨年の秋、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』での演技で注目を集めた新名基浩(40)。「空さん」といえばわかるだろうか。その穏やかなたたずまいと存在感で、短い出演シーンにもかかわらず、見る人に強烈なインパクトを残した異色俳優の素顔に迫った。(取材・文:中村裕一/撮影:落合星文/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
現在放送中のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』。 福原遥(24)演じる主人公・岩倉舞が通っていた、浪速大学の人力飛行機サークル「なにわバードマン」の中で、ひときわ異彩を放っていた一人の部員がいた。彼の名前は“永遠の3回生・空さん”こと空山樹。 舞を中心に、まさに青春の一コマのような会話が繰り広げられるなか、それまでずっと沈黙を守っていた空山は、第20話で初めて言葉を発し、視聴者から驚きとともに迎えられた。しかし、人力飛行機をこよなく愛するそのひたむきな姿は多くの人の心を揺さぶった。 演じていたのは俳優・新名基浩。40歳ながら大学生を演じることもあれば、大河ドラマではシリアスな時代劇もこなし、時には性別を超えて、スケバンを演じることもある。遅咲きの新星はいかにして、演技の幅を広げていったのだろうか。
しゃべるシーンは一瞬、ほぼ無言な空さんの撮影秘話
空さんとして出演していた当時の感想を尋ねられ、「びっくりしました、僕も」と静かに答えた新名。彼にとっても意外な反響だったようだ。 「友だちからは『いつしゃべるんですか?』と聞かれたり、地元の遠縁にあたる知り合いから連絡が来たりしました。ありがたかったですけど、やっぱり朝ドラってこんなにたくさんの方が見てくれてるんだ、という驚きのほうが大きかったです」 くだんのシーンの裏側についても「撮影中もずっとしゃべらず、みんなのお芝居を見ている時間が圧倒的に長かった」そうで、「しゃべるシーンも一発撮りか初撮りぐらいで瞬時に終わっていった感じなので。なんか本当に一瞬に過ぎたけど、しゃべってない時間はたくさんある……みたいな……そんな感じで、ちょっと……」 おとなしく真面目なその語り口に、まるで空さんが目の前にいるような不思議な感覚に陥る。