「演じるうえで年齢や性別は意識していないかも」――朝ドラ“空さん”役で話題の40歳ボーダーレス俳優・新名基浩の動力は
大事なことは「自分が“表現”を必要としているか」
現在40歳。俳優として彼が胸に抱く心構えを尋ねた。 「例えば『役者だったらこうならないといけない』とか『飲み会は酔いつぶれるまで』とかみたいなのはあんまり信じないようにしています。特にコロナ禍を経たうえで思うのは、人間関係で無理をしないこと。それと距離感。あとは、優しくしてくれたからといって別にその人はいい人とは限らない(笑)」
改めてここまでの道のりを振り返り、仕事に対する向き合い方に変化は? 「勢いで上京したし、30代はとにかく現場に出ればなんとかなる、と思ってました。けど、やっぱり圧倒的に台本を読む数が足りなかったなって今にして思います。とにかく何回も何回も台本を読んで自分なりに感じたことをもうちょっと早いときから大事にしておけばよかったですね。それから『自分が“表現”を必要としているかどうか』。これは僕の中ですごく大事な判断基準だと思っていて、ただお金を稼ぐってことだけだったら、どこかの会社に就職したほうが絶対いいわけで」 確かに、生きることだけが目的なら、わざわざ俳優である必要はないだろう。
「振り返れば自分はずっと“表現”を欲していたのかなと。だから、演じるということもそうだし、表現っていうことを自分が今後、定年のない世界の中でちゃんと必要としていけるかということは、常に考えないといけないとは思います」 では、一人の人間として大事にしたい価値観は? 「僕もそうですけど、人は空気とか感情とかで動いていると思うんです。それももちろん必要なことですが、同時に自分の感情を一度、冷静に受け止めて、自分の機嫌をとりながらも相手の感情も双方向でちゃんと考えたいです」 確かに余裕の感じられない、むき出しで一方的な、コミュニケーションとも呼べないやりとりが今の世の中にははびこっているような気がする。 「飲みの席とかで集まると、やっぱり誰かのうわさ話になるじゃないですか。それが結構、僕、つらいんです。自分を振り返ってしまうというか、人のことを言うにしても、自分ごときがそれを言っていいのか、みたいな気持ちになってしまう。なんかもう選択肢が『こっち』か『あっち』しかない感じがして。昔は対立する意見があっても、どこか妥協し合ってた気がするんですけど」