世界中の「出生率上昇のためのバラマキ」にはどれほど効果があるのか
少子化はいまや、世界中の先進国で深刻な問題となっている。各国政府はインセンティブづくりのために給付金を増やしているが、果たしてそれは効果を生むのか。 【画像】世界の少子化はこんなに進んでいる
世界に広がる少子化
30年ほど前、東アジア諸国の政府には、女性が身体的に妊娠可能な年齢になったことを喜ぶ理由があった。当時、韓国では、女性がそれまでと同じように行動すれば、出生率が平均1.7人まで下がると見積もられていた。1970年には、出生率は4.5人だったにもかかわらずだ。 東アジア全体で、政治家たちは10代の妊娠を劇的に減少させることに成功した。この一世代のうちに、出生率は驚くほどうまく減少した。だが、それはあまりにもうまくいきすぎた。出生率はいまなお下がり続けているのだ。 現在、妊娠可能な年齢の韓国人女性が、上の世代と同じように行動したと仮定した場合、生涯に産む子供の数は、0.7人だと見積もられている。 2006年以降、韓国政府はGDPの1%に相当する、およそ2700億ドル(約42兆円)を少子化対策に費やしている。それは子供がいる世帯への減税やマタニティケア、さらには政府後援のお見合いなど、多岐にわたる。 最初に出生率が低下した頃、出生率を下げることに比べて上げることがこれほど難しいとは、誰も想像していなかっただろう。役人たちは、本来であれば産まれていたはずの人口が恋しくて仕方ないはずだ。 東アジアで起きていることは、各地に急速に広がっている。世界中で赤ん坊が不足しているのだ。豊かな国々のなかでは、イスラエルを除いて人口維持に必要な数の赤ん坊が生まれておらず、ほとんどの地域で出生率が低下している。 その結果、各界の著名人たちも懸念を表明するに至っている。フランス大統領のエマニュエル・マクロンは、「国の強さは、力強い出生率を生み出す手腕にかかっている」と述べた。テスラやXのオーナーであるイーロン・マスクは、少子化がこのまま進むことによる文明の終焉を予言した。