世界中の「出生率上昇のためのバラマキ」にはどれほど効果があるのか
子供は「贅沢品」?
親になるカップルのポケットに金を入れて、使い道を決めさせる政策をとる政府はまだ幸運だったかもしれない。 ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの経済学者、ガイ・ラロックと論文の共著者らは、フランスの所得税減税は女性の出産数を増やす可能性があると指摘する。テルアビブ大学のアルマ・コーエンとその同僚たちは、イスラエルにおける毎月の給付金も同様の役割を果たしているとした。 だが、こうした政策による結果は比較的小さいものであるのに、かかる額はきわめて大きい。というのも、こうした金銭的インセンティブの有無に関係なく子供を産もうと思っていた人々にも、多くの現金が支払われることになるからだ。 ポーランドの経済的ボーナス制度である「ファミリー500+」では、2016年の導入から2019年までに、生まれた子供1人あたりに100万ドル(約1億6000万円)もの費用がかかった。フランスでは過去10年間、子供1人につき200万ドルの費用がかかっている。 こうした政策の思考の原点は、出生率の長期低下と時を同じくして起こった、女性の社会進出にある。 ノーベル経済学賞を受賞した経済学者のゲーリー・ベッカーは1960年代に、次のように述べている。「子供は金と時間の余裕に見合う数だけ親が購入する商品として考えるのが最良である。仕事の負担を減らし、世帯所得を増やすことで子供は増えるはずだ」(続く) 「お金がかかる」という理由で子供が少なくなっているのなら、世帯への給付を多くすれば問題は解決するはずだが、成果が出ないのはなぜか。親になる女性の年齢や社会階層を詳しく見ると、少子化の本当の原因が見えてくる。(後編へ続く)
The Economist