2025年へ国内企業のIT投資が拡大基調、DXやAIは現場実践に--ITRのアナリスト陣が解説
AIへの取り組み状況 今回の調査では、AIに関連する予算の計上状況についても尋ねた。計上している企業は70%に上り、内訳はIT予算の中に計上しているのが29%、IT予算とは別に業務部門や研究開発などとして計上しているのが24%、ITの予算の内外で計上しているのが17%だった。また、AI関連予算の前年度比での増減は、「増加する」とした企業が2024年度実績で56%、2025年度予想で58%と拡大傾向にあった。 AIのユースケースについて、現在の上位は営業(31%)、セキュリティ(30%)、IT(28%)、マーケティング(28%)、カスタマーサポート(27%)、人事(27%)だった。今後ではマーケティング(25%)、データサイエンス(23%)、広報(23%)、セキュリティ(23%)、教育研修(23%)などが挙がっている。 さらに、上位のユースケースと業界ごとの相関性を分析したところ、現在についてはあまりバラツキが見られなかったが、今後については、製造業でエンジニアリングがトップに挙がるなど、業界により全体とは異なるユースケースが上位となっている。 入谷氏は、業種に応じた使いやすいAIの機能が提供されつつあることで、今後はより細分化が進むと予想する。三浦氏は、内容の要約や分析などさまざまな業種に共通したAIのユースケースが広がり、2025年度から本格的な実用段階に入ると予想している。
IT人員とデジタル人材の動向 回答者の組織全体に占めるIT人員の比率は、2019年度の7.2%から2023年度の6.1%まで減少が続いたが、2023年度は6.7%、2024年度は7.0%へ増加している。コロナ禍に多くの業種が不況に陥り人員削減を進めた一方、コロナ禍後は市況回復と人材不足への対応でIT活用が必至となっているという。 また、デジタル戦略を遂行するための人材の確保では、中途採用が53%、新卒採用が51%、業務部門からの異動が29%、IT部門からの異動が25%、IT部門から業務部門への異動が17%など、多様な手段を用いていることが分かった。今回の調査で初めて選択肢に追加したという定年後の再雇用も11%に上る。 水野氏は、「(プログラミング言語の)『COBOL』に対応できる人材が必要、不在といった声があった」と明かす。ITインフラ領域を専門とする入谷氏も、「メインフレームの調査で、とあるIT子会社が定年を引き上げていた。やはりCOBOLへの対応が課題になっている」と述べる。 ITの人材不足解消では、副業やギグワークの活用も注目されているが、調査では7%にとどまった。三浦氏は、「数年前に副業やギグワークが流行したものの、現在ではそれらがあまり活用されていない。むしろ定年後再雇用が新しい働き方になるかもしれない」と指摘した。