2025年へ国内企業のIT投資が拡大基調、DXやAIは現場実践に--ITRのアナリスト陣が解説
IT戦略での重要テーマ これまでの国内IT投資動向調査では、「売上増大への直接的な貢献」「業務コストの削減」「顧客サービスの質的な向上」「ITコストの削減」が常に回答の上位を占めてきたため、今回の調査では回答の選択肢からあえて除外したという。 これによって、回答企業が抱えるテーマがさらに明確になり、今回は「デジタル技術によりイノベーションの創出」「従業員の働き方改革」「情報やデータの活用度の向上」が上位3つとなった。 また、回答者が挙げた上位3つの選択肢について重み付けをした分析では、トップが「情報やデータの活用度の向上」となり、以下には「システムの性能や信頼性の向上」「サイバー攻撃への対策強化」「デジタル技術によりイノベーションの創出」「IT部門のスタッフの人材育成」「既存システムの統合性強化」が続いた。 重み付けによる分析について入谷氏は、回答企業では、DX推進に伴うデータなどの活用にとどまらず、事業継続性に大きな影響を与えるランサムウェア被害やシステム障害などのリスクを重視していることが分かり、長年の課題であり続けるレガシーシステムのモダナイゼーションもなかなか推進しづらい状況があると指摘する。 他方で、これらテーマに関する2024年度の実施率と今後の実施予想率の相関性を見た場合、特に生成AIは、2024年度実施率の19%から今後の実施予想率では64%と45ポイント上昇。「デジタル技術を活用した新たな収益源の創出」も20%から64%へと44ポイント上昇しているなど、三浦氏は、テクノロジーによりビジネス自体を変革する本来の意味でのDXへの取り組みが上位を占めていると解説した。
DXへの取り組み状況 今回の調査で、DX関連予算を計上している企業が82%に上った。内訳は、IT予算の中に計上しているのが36%、IT予算とは別に業務部門や研究開発などとして計上しているのが25%、ITの予算の内外で計上しているのが20%だった。 DXの推進体制・プロセスの整備状況を2020~2024年度の経年変化で見ると、「経営戦略の中でDX戦略のビジョンや方針を位置付けている」企業は23%から33%に、「デジタル戦略の専属役員(最高デジタル責任者など)を任命」が25%から27%に、「デジタル戦略遂行のための人材を配備」が35%から37%に、それぞれ増加しており、DXの取り組みが推進されている様子がうかがえた。 また、調査で同社が設定した16のDXテーマの2023年度および2024年度の取り組み状況では、「ワークスタイルの変革」が最も高く、2023年度が43%、2024年度が46%だった。また、「多様なタッチポイントでのシームレスなサービス提供」が28%から31%へ3ポイント増えた。 三浦氏は、これまでの調査結果では、ワークスタイル変革や業務自動化といった社内向けテーマへの取り組みが中心だったとし、今回の調査で、ようやく(DX本来の)顧客エンゲージメント領域の拡大傾向が見られたと解説する。水野氏も、同社が実施した別の調査でDX推進企業が3割程度にとどまっていたとし、今回の調査結果では「DXの停滞を懸念していたが、2024年度調査では拡大傾向が示された」と述べている。