冬、そして夜こそオープンカーに乗ろう! メルセデス・ベンツCLE200カブリオレにモータージャーナリストの島下泰久が試乗!!
オープンカーを楽しむのに最高の季節がやってくる!
メルセデス・ベンツ・ブランドのなかで唯一のオープン・トップ・モデルとなるCLE200カブリオレ。優雅なスタイリングを持つこのカブリオレで夜の街へ。人目を気にせず思いっきり喜びが味わえる夜、ドイツ製オープンカーに島下泰久が試乗した。 【写真19枚】シルバーのメルセデスのカブリオレがこんなに夜の都会が似合うとは! 冬のオープンはカッコいい!! ◆オープンの楽しさ、歓びを独り占め ここのところの急な寒さに、いよいよオープンカーの季節の到来だなと感じている。過去にルーフの開くクルマを所有していた時、何より好きだったのが寒い季節の夜中にオープンにして都心を走ることだった。ひんやりとした風を受けて頭がシャキッとする一方、ヒーターを入れておけば身体は寒くない。露天風呂などと形容される気持ち良さである。 空気が澄んでいるから夜景もきれいで、とりわけ見上げたらそこにスカイスクレーパーというのが萌える。しかも、これが肝心なところなのだが、周辺が暗い夜ならば、そんな風に悦に入っているところをジロジロ見られないで済むのもまた良い。オープンの楽しさ、歓びを独り占めにできる。寒い季節になるとオープンカーに思いを馳せてしまうのは、そういう訳なのだ。 ◆CLEカブリオレ そんな冬のオープンカーでのドライブに出掛けるのに、今ならどのモデルを選ぼうか。実はほとんど迷い無しにメルセデス・ベンツCLE200カブリオレ・スポーツに決めた。この春、先行したクーペに続いて登場した、真新しい4シーター・オープンカーである。 ひとつ前の世代のメルセデス・ベンツのラインナップには、クーペやカブリオレがこれでもかというほど設定されていた。何しろS、E、Cの各クラスにそれぞれクーペ、カブリオレが用意され、他にSL、AMG GT、SLCというロードスターまで選ぶことができたのだ。 今はBEVなど他の分野にリソースを割かなければいけないということだろう。選択肢はだいぶ絞られてしまった。CLEは従来のEクラスとCクラスを統合したモデルということで、思い出すのはかつてのCLKだが、実車を目の前にすると、存在感はそれとは別物だと思わされる。 2865mmというホイールベースから分かる通りベースはCクラスだが、例えばその全長は4850mmと、先代Cクラス・カブリオレより145mm長く、それどころかEクラス・カブリオレに対しても15mmとは言え、大きくされているのだ。 おかげでスタイリングは、とても優雅な雰囲気。振り返るとCクラス・カブリオレはキャビンの大きさに対してリア・デッキがやや短く見えたものだが、CLEカブリオレは開けてはもちろん閉めても、とても伸びやかで、エレガンスが薫る。 カラー・コーディネートも豊かで、ボディカラーは9色、ソフトトップは3色から選べる。更に内装は4パターンを設定。派手めにも行けるが、ボディカラーは敢えて抑えて、いざトップを開けた時に華やぐ内装という試乗車の組み合わせは、まさにコレがそのまま欲しい! というくらいソソられた。 その内装がCクラスとほぼ変わらないのが唯一、残念と言えば残念だが、クオリティに不満があるわけではない。前席はCLE専用のスポーツ・シート。後席に乗り込む際には、その肩にあるレザーベルトを引けば、全体が前方にスライドしながらバックレストが前倒しになる。 開けたソフトトップを収めるために後席はクーペに較べてバックレストが立ち気味だが、それでも大人が何とか座れるスペースは確保されている。ラゲッジスペースも広く、しかもトランク・スルーも備わるなど実用性には文句をつける余地はない。 ◆素晴らしい剛体感 ひと通り確認したら、いよいよ走り出すことにする。まずはソフトトップを閉じたままで出発だ。 思わず唸らされたのがクーペに何ら遜色ない密閉感、そして剛体感とでもいうべき感触である。オープンカーにしてはという前置詞はもはや不要。閉めておけば、クーペそのままの質の高い乗り味を満喫できる。 それはフットワークの良さにも繋がっていて、操舵に対する反応は正確そのもの。車体は重くなっているものの特にそのネガを意識させることなく、クルマ全体がひとつの塊になったような一体感で旋回していく。 2リッターターボエンジンは最高出力204psと、スペック的には特筆すべきものはない。けれど、これまた数値以上の活気が感じられるのは、ひとつは電気モーターにより23psをアドオンするISGの力であり、もうひとつは意外や勇ましいサウンドを奏でる吹け上がりのおかげだろう。 そうやって走りを楽しんでいたら、陽が落ちてきた。そろそろオープンにするタイミングである。 周囲の暗さの中で一層際立ってくるのが内装のイルミネーションの華やかさだ。各部のトリムやスイッチパネル、エア・アウトレットなどに仕込まれたアンビエント・ライトは、もはや室内ではなく外界と繋がったインテリアをムーディに演出する。 そうなると、さすがに人目を惹いてしまうが、心配は要らない。カラーは控えめなトーンのものも含めて、64色に切り替えられる。 オープンにして改めて実感させられるのが、ボディ剛性の高さである。こうしたホイールベースの長いオープンカーには付き物の、前後の位相がずれるような感覚が皆無で、分厚い大理石の板の上にでも乗っているかのようなのだ。路面の悪いところでも、馬脚を現すことはない。 室内への風の巻き込みは、開口部の大きな4シーターということで小さくはないが、CLEカブリオレにはエアキャップがある。フロント・スクリーン上縁とリアのウィンドディフレクターが立ち上がって、巻き込みを驚くほど軽減してくれるのだ。 この状態は見た目が今イチなのが難点だが、それも夜なら目立つことはない。これもまた、夜のオープンカーのメリットとして挙げておこう。 暖房もよく効く。シート内蔵のアウトレットから首元に温風を吹き出すエア・スカーフも標準装備。今はまだ無くてもいいが、これがあれば真冬でもきっと快適だろう。 これだけ艶やかなクルマだけに、信号待ちなどで停止した際には周囲の視線を感じないこともない。けれど冒頭に記した通り、走り出してしまえばそれらもすぐに闇に紛れ、自分だけの楽しみに没頭できる。あるいは隣に誰かを乗せていても、ワル目立ちすることはないはずだ。 やっぱりオープンカーで出かけるならば夜に限る。しかも、冬はもうすぐだ。メルセデス・ベンツCLE200カブリオレ・スポーツを楽しむのに最高の季節がやってくる! 文=島下泰久 写真=茂呂幸正 ■メルセデス・ベンツCLE200カブリオレ・スポーツ 駆動方式 フロント縦置きエンジン後輪駆動 全長×全幅×全高 4850×1860×1425mm ホイールベース 2865mm 車両重量 1900kg エンジン形式 直列4気筒DOHCターボ 総排気量 1997cc 最高出力 204ps/5800rpm 最大トルク 320Nm/1600~4000rpm 変速機 9段AT サスペンション(前) ダブルウィッシュボーン/コイル (後) マルチリンク/コイル ブレーキ(前後) 通気冷却式ディスク タイヤ (前) 245/40R19 (後) 275/35R19 車両本体価格 936万円 (ENGINE2025年1月号)
ENGINE編集部
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