わずか3年でミシュラン三ツ星獲得!注目のフレンチ店「3ツ星レストランの進化」とは?シェフが語る
いま香港から日本に来て4年目ですが、週3~4日豊洲市場に通ったり、四季を感じられる和食やお寿司を食べに行ったりするうちに、この国の魅力的な食材への理解も年々深まってきました。旬の日本の食材を思うように料理できるようになってきていることが「SÉZANNE」の料理の軸のひとつになっています。
自分の人生が反映されたお皿、3ツ星の自由と責任
ちょうどいまの季節にお出ししている上海蟹のお皿は現在の「SÉZANNE」を象徴する料理と言えます。東京の前は5年間香港でも働いていたので、もちろん中国の食材にも愛着がありますし、テクニックのベースはその地のものです。 ただし、紹興酒ではなくフランスのジュラワイン「ヴァン・ジョーヌ」(ジュラ地方の特有の黄ワイン)で仕上げるというのは、パリでも働きフランス料理を学んできた自分らしさがしっかりと入っている部分であり、処理の丁寧さや火入れへのこだわりといった料理自体の繊細さにはここ東京の土壌がしっかりと宿っています。おいしいのはもちろんですが、何より自分のこれまでの人生がしっかり反映されたお皿なのです。
3ツ星レストラン自体の変化
20年前は、おそらくいま以上にゲストがレストランの名前で店を選ぶことが多く、大箱のレストランで、名前を冠されたシェフがいなくてもそこで食べることに満足する、ということも全然あったと思います。ただ、いまはローカルレストランのレベルが格段にあがり、シェフのネームバリューだけでお客さまに満足いただけるという時代ではないので、「SÉZANNE」を他の国に出店をして拡大していくといったことは考えていません。 お客さまはそこにシェフがいることを期待していますし、ストーリーを求めています。日本の8席のカウンター割烹であれば、そもそもそれが当たり前のことです。 僕は朝6時半に起きて市場に旬の食材をチェックしに行き、そこからランチ営業があり、夜も食後の挨拶までいると24時くらいまでお店にいることも少なくありません。ホテルのメインダイニングで定休日があるというのは珍しいかもしれませんが、「SÉZANNE」は月・火曜がお休みで、常に進化し続けるためにはこの休息も絶対に必要です。今年は子どもも生まれて、料理長以外に父親という役割も増えましたしね(笑)