なぜ三木谷会長の神戸で監督交代の”悪しき歴史”が繰り返されるのか…吉田氏3度目登板の”応急措置”で見えてこない再建ビジョン
ここからの逆襲は可能なのか。 2018シーズンには今シーズンと同じ第18節終了時で最下位だった名古屋グランパスが最終的に15位まで浮上してJ1残留を果たしている。15位の柏との勝ち点差が10ポイント。総得点はリーグ最少タイ、総失点は同最多と神戸より数字は悪かった。 この時、名古屋がV字回復を導いた要因は、夏の移籍市場における大型補強だった。 センターバックの丸山祐市(FC東京)と中谷進之介(柏)、サイドバックの金井貢史(横浜F・マリノス)、ボランチのエドゥアルド・ネット(川崎フロンターレ)、そしてFW前田直輝(松本山雅FC)の新戦力が瞬く間にフィット。GKランゲラックやMFガブリエル・シャビエル、得点王を獲得したFWジョーらの既存戦力と噛み合った。 消化試合がひとつ少なかった名古屋は、後半戦の17試合で10勝1分け6敗と勝ち点を31ポイントも獲得。得点37に対して失点26と攻守のバランスも大きく改善され、勝ち点41で5チームが並ぶ大混戦のなかで得失点差で生き残った。 神戸も指揮官交代が発表される前に、走力に長けたサイドアタッカーで、サイドバックでもプレーできるMF飯野七聖(25)をサガン鳥栖から完全移籍で獲得したと発表した。夏の補強戦略を問われた永井SDは、こう断言した。 「まもなく新しい発表ができるかな、と考えています」 国内外の一部メディアですでに報じられているモンテネグロ代表FWで、韓国Kリーグ1部の得点ランキングでトップに立つステファン・ムゴシャ(30)の獲得を示しているのだろう。大迫勇也(32)のコンディションがなかなか整わず、7試合ぶりに先発した浦和戦でも自ら申し出る形で、後半17分にベンチへ下がっている。だが、ストライカーの補強だけでなく、元ベルギー代表トーマス・フェルマーレンの退団とともに、カバーリングやビルドアップが著しく低下しているセンターバックの補強も急務といっていい。 何よりもピリッとしない状態が続くチームには、4年前の名古屋のように、補強を介した戦力面、そしてメンタル面でのテコ入れは欠かせない。強化部の手腕が問われるなかで、当時の名古屋とは決定的に異なる点がある。 前半戦で泥沼の8連敗を喫しながら、名古屋はJ2を戦った前年の2017シーズンから指揮を執る風間八宏監督(現セレッソ大阪スポーツクラブ技術委員長)を続投させた。既存の戦力と補強組が噛み合う土壌が、風間監督のもとで整っていた。 対照的に三木谷会長体制になってからの神戸は、監督が2度交代した2005シーズン、今シーズンと同じく3度交代した2012シーズンはいずれもJ2へ降格している。 果断な決断が繰り返されてきたと言えば、聞こえがいいが、実際は監督の人選を含めて、クラブの強化に一貫性や哲学の類が伝わってこない。 フロントのトップに“我慢”が感じられないがゆえに、監督交代のたびに現場は混乱に陥ってきたのが現実。監督交代がうまく作用した例はないのだ。なのにまた同じ“失敗”を繰り返すのか。 神戸で現役を終えた吉田新監督は、クラブを通じて「この厳しい現実を打破するべく私のことを信頼し、このような機会を与えてくれるクラブの力になるため、監督を引き受けさせていただきました」とコメントを発表し、一致団結を訴えた。 しかし、過去に指揮を執った期間の成績で判断する限りでは、残念ながら今回も明確なビジョンが伝わってこない。敵地の駅前不動産スタジアムに乗り込む鳥栖との次節を含めて残り16試合。一戦必勝態勢に入る神戸は、すでに大きなハンデを抱えている。