なぜ三木谷会長の神戸で監督交代の”悪しき歴史”が繰り返されるのか…吉田氏3度目登板の”応急措置”で見えてこない再建ビジョン
楽天グループ創業者で、神戸市出身の三木谷浩史氏がクラブの経営権を取得したのが2004年1月だった。目に見える結果を現場トップの監督に求め続け、すぐに成果を出せないと判断すれば交代を即決する。楽天グループを1997年の起業から急成長させた剛毅果断ぶりを、サッカーの世界にも持ち込んだと言っていい。 しかし、歴代最多の8度のリーグ優勝を誇る鹿島アントラーズは1992年以降の31年間で延べ15人。直近の5シーズンで4度優勝した川崎フロンターレは1997年以降の26年間で16人。鹿島のトニーニョ・セレーゾやオズワルド・オリヴェイラ両監督、川崎の鬼木達監督のように、強豪クラブには例外なく長期政権を託された指揮官がいる。 対照的に神戸が手にしたタイトルは2019シーズンの天皇杯だけ。会見では永井SDにこんな質問も飛んだ。再び繰り返された指揮官交代を、どう受け止めるのかと。 「ヴィッセル神戸がビッグクラブであるがゆえ、より結果にフォーカスしなければいけない、というのをすごく感じている。時間をかけて戦術をきちんと構築しながら内容を求めていくという、ふたつのものを同時に押し進めていけるのが本当ならば理想ですけど、このクラブの大きさを考えると、より結果にフォーカスせざるをえない」 神戸がビッグクラブかどうかは別として、永井SDの言葉からは、今月1日に急きょ就任した千布社長よりもはるか上、すなわち三木谷会長から常に結果を求められているという神戸特有の背景が強く伝わってくる。 しかし、今回の指揮官交代が奏功するかと言えば、首を傾げざるをえない。 あくまでも“応急措置“だろう。 吉田氏は2017年8月にネルシーニョ監督(現柏レイソル監督)の、2019年4月にはフアン・マヌエル・リージョ監督(現アル・サッド監督)の辞任を受けて監督に就任した。しかし、第1次政権で3連敗を喫して2018年9月に、第2次政権では7連敗を喫した後の2019年6月に、ともにシーズン途中の退任を余儀なくされている。 2020シーズンからはJ2のV・ファーレン長崎のコーチに、昨シーズンは長崎の監督に就任したが5月に退任。アシスタントコーチを務めた後の同年12月をもって退団し、今シーズンから強化部スタッフとして神戸に復帰していた。 「ロティーナ氏が築いてくれた守備のオーガナイズを継続しつつ、よりアグレッシブなサッカーを展開してJ1残留を是が非でもつかみとるために今回の決断に至った。吉田氏は今シーズンよりヴィッセル神戸に戻り、現在のチーム状況と選手の特徴もよく知っているということで、この窮地を救うために力を貸していただくことになった」 吉田氏へ3度目のオファーを出したのが、ごく最近だったと千布社長は明かした。その上でJ1残留圏の15位・ジュビロ磐田に勝ち点で8ポイント差をつけられ、最下位にあえぎ続ける苦境を踏まえながら、こんな希望を口にした。 「いまの状況を考えると奇跡に近いかもしれないが、吉田氏とともにJ1残留をつかみ取るために、チームが一致団結して戦っていきたい」