転んでも割れない白磁の器に和紙のテーブル?日本の伝統工芸品はここまで進化している…!
ラグジュアリーブランドのイベントやセレブリティの私的パーティなどで空間演出とお料理込みのテーブルコーディネートを手掛け、一躍話題になったアートディレクターのhideyaさん。今回は、日頃から興味をもっている「伝統工芸」をテーマに熱く語ります。 【写真集】注目を集めるクリエイターが語る、伝統工芸品の本当の魅力とは? 豊かな感性や思考には、衣食住のすべてが有機的に作用する、というのがhideyaさんの考え。 hideyaさんの職域は広く、食器だけでなく、店舗デザイン、家具、ファッション、ジュエリー、ホテルオリジナルのスイーツなどまで、多岐にわたります。 「人の時間を形づくるのは、一つひとつの小さな物事の積み重ね。豊かな暮らしというのも、着るもの、触るもの、食べるものといった、生活を形づくるすべてが揃ってこそだと思うんです」
テーマは日本の伝統工芸品
日本のものづくりは技術力に優れていながら、その技術を活かした魅力的な商品が、まだ十分に世に出ていないのが現状です。 一方で、エルメスをはじめとする欧米のメゾンが成功しているのが、哲学やビジョンをもとにしたものづくり。 固定概念にとらわれず、さまざまな技術やデザインを柔軟に組み合わせ、魅力的な商品を生み出しています。 「ものづくりは美しくあるのが当然ですが、その前にビジョンがあることが、伝統工芸を広めていくうえで重要だと考えています」 日本の伝統工芸品がもつ可能性は無限大。アートディレクターの視点を取り入れながら、その可能性を最大限に引き出すようなものづくりをしていきたいとhideyaさん。 「『これを使ったら幸せかも』と買い手がイメージできるようなものづくりが目標。日本にある優秀な技術を大切にしながら、それを実現する方法を探り続けたいと思います」
壁を部屋に飾る
今回は日本の伝統工芸品として、置き壁と器、テーブルの3つをご紹介します。まず1つ目は「お家に置く壁」。木工芸と左官職人の技を融合させた作品です。 壁は、淡路島で代々続く左官技術を継承し、日本を代表する左官職人として活躍する久住有生さんに依頼。箱のような額装は、糸島を拠点とする木工家の酒井航さんに、hideyaさんが掛け合ったのだそう。 「もともと茶室で使われることの多い左官の壁は、現代の住宅には設置しにくいものです。この作品では、左官の壁をアートピースとして切り出すことで、好きな場所に置くことができるようにしました」 独特の風合いのある左官の壁に、温もりある木を合わせた「置く壁」は、なんだかほっとする、リラックスした茶室の空気感を演出してくれます。 奥行きのある額は、写真ではわかりにくいのですが、実は内側の側面がわずかに斜めになっていて、光と影の演出に深みをもたらします。光の入り方によって陰影がより変化する効果もあり、じっと眺めていると、まるで茶室に自分がいるような感覚も。季節や時間による表情の変化を感じ取るのも、楽しみかたの1つです。