「何やっとんじゃワレ!」飛び交う罵声…オリックス山本由伸が1イニング3与死球のプロ野球タイ記録でも勝てた理由
メットライフドームにおいて9試合目、通算29イニング目にして初めての自責点がついても、続く山川へ投じた6球目のシュートが再び手首をかすめても動揺しない。4個目の死球に「デッドボールかワレ!」と怒声を浴びせられたなかで森を空振り三振に斬り、7回を2失点(自責点1)、被安打4、101球の粘投でマウンドを後続に託して2勝目をあげた。 2勝2敗1分けで迎えた6連戦の最終戦。山本は「とにかく勝とうと思って、気を引き締めて投げました」と貪欲に結果を求めて腕を振り続けた。理由は1週間前の今シーズン2度目の登板にあった。 5連敗で迎えた6連戦の最後の先発を託された、千葉ロッテマリーンズ戦で試合を作れなかった。 自身に勝敗はつかなかったものの6回途中、5失点でマウンドを降りた。試合も8回裏に決勝点を奪われて、新型コロナウイルス禍の今シーズン限定の変則日程となる同一相手との6連戦をすべて落とす屈辱を味わわされた。一矢を報いることすらできなかった自分が不甲斐なかった。 敵地で喫した6連敗中には、開幕投手を託された山岡泰輔が左脇腹に違和感を覚え、一回途中で降板するアクシデントも発生した。翌日には登録が抹消されたなかで昨シーズンの最優秀防御率(1.95)のタイトルを獲得し、今シーズンの初登板だった先月21日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦で8回無失点、10奪三振の快投で勝利投手になった山本にかかる期待はますます大きくなっていた。 「チームの状態は徐々に上がってきているので、さらに勝ちを増やしていけるように頑張りたい」 さわやかな笑顔を浮かべながら、本拠地の京セラドーム大阪へ戻る7日から始まる北海道日本ハムファイターズ、福岡ソフトバンクホークスとのトータル12連戦を山本は見すえた。シュートを多投した代償として与えた4つの死球にも、西村徳文監督は「よく抑えたと思う」と目を細める。 「そのなかでの2失点と、いうところですから。長い遠征でしたが、それだけにこのカードで勝ち越せたことはチームにとって大きい」 3つ目のカードで初めて勝ち越せただけではない。今シーズンで初めてとなる連勝をリーグ連覇中の王者からもぎ取ったことで、最下位からの巻き返しを期すチームの士気は間違いなく上がる。その中心に宮崎・都城高からドラフト4位で入団して4年目にして、オリックスだけでなくパ・リーグの、そして球界全体を代表するエースの風格を漂わせつつある山本がいる。