車でのお出かけ時は、チャイルドシートを正しく装着して子どもの命を守って!抱っこ乗車で事故にあい、腸に穴が開いた事故例も【小児救急医】
年齢層別チャイルドシート使用率(2022年と2023年の比較)
――子どもの年齢が上がると、チャイルドシートの使用率が下がるのはなぜでしょうか。 種市 チャイルドシートは動きが制限されてしまうので、子どもにとっては苦痛なものです。年齢が進む中でチャイルドシートに乗せると、大泣きしたり、暴れたりする子もいるでしょう。そうするとママ・パパも「まあいいか」と思ってはずすようになってしまいます。 しかし、チャイルドシートを装着しないで車に乗せるのは、たとえるなら安全バーを装着しないでジェットコースターに乗るようなものです。大人も遊園地でそんなことはしないですし、遊園地側もさせませんよね。それと同じぐらい危険な行為だと考えてください。
2024年5月には、パワーウインドウに首がはさまり、亡くなってしまった2歳児も
2024年5月、東京で車の後部座席に乗っていた2歳の女の子が、電動で上下する窓ガラス「パワーウインドウ」に首をはさまれて亡くなってしまう事故が発生しました。報道では母親は「後方を確認せずに、パワーウインドウを閉めた」「チャイルドシートのベルトを装着していなかった」と話しているとのことです。 ――この事故もチャイルドシートを正しく装着していれば防げた事故でしょうか。 種市 前述のとおり、子どもがいくら嫌がってもチャイルドシートを正しく使用することが事故を防ぐことにつながります。 またパワーウインドウに関しては、自分の車にはさみ込み防止機能があるか事前にしっかり確認しておきましょう。はさみ込み防止機能とは、ウインドウが上がるときに手などのはさみ込みを感知すると、ウインドウの上昇が停止して、自動で少し開く機能のことです。 自分の車にはさみ込み防止機能が付いているかわからないときは、パワーウインドウをONにしてまるめたタオルなどをはさんで確認するといいでしょう。 ただし、はさみ込み防止機能の有無にかかわらず、チャイルドシートの正しい装着は必須です。
子どもが嫌がらずに座るチャイルドシートの開発を
種市先生は、チャイルドシートを嫌がる子が多い背景には、子ども目線の工夫がたりないのではないか、と言います。 ――子どもがチャイルドシートを嫌がらずに座ってくれるには、どうしたらいいのでしょうか。 種市 富山大学では、脳神経外科医や工学部、小児科医、看護師などでチームを作り「安全・快適なチャイルドシート」をテーマに、どのような工夫をすると、子どもがチャイルドシートに嫌がらずに座ってくれるのかを研究しています。私もメンバーの1人です。 既存のチャイルドシートでは、子ども目線での工夫がたりないので、「座ってくれない」「運転中に泣きだす」といった問題が生じているのだと思うんです。チャイルドシートを根本的に見直す時期に来ていると思います。 また子どもが嫌がったときに、ママ・パパがベルトをはずすと子どもは「泣けば、ベルトをはずしてくれる」と学習します。そのためママ・パパが根気よく、言い聞かせていくことが必要です。 チャイルドシートに座ると「大好きなDVDが見られる」「おやつが食べられる」など、子どもにとっていいことがある!ということを経験させながらでもいいので、チャイルドシートに座る習慣をつけていきましょう。 ――チャイルドシートを正しく使っていれば事故は防げるのでしょうか。 種市 以前、子どもが車内でチャイルドシートに座ってよく寝ているので、少し車から離れてサービスエリアで休憩を取っていたママ・パパがいました。 ママ・パパがいない間に、子どもが目を覚まして動こうとして、ベルトで首がしまり救急搬送された事故事例があります。 子どもの事故を防ぐには、ママ・パパの想像力が大切です。 「子どもが目を覚ましたら危ないから、夫婦で交代して休憩をとろう」と考えたりする力を養ってほしいと思います。 子どもを先に車に乗せて、子どもが泣くのでリモコンキーを持たせたまま、ママ(パパ)が運転席側に回り、車に乗ろうとしたら、子どもだけ車内に残した状態でロックがかかってしまったという事故も時々あるようですが、こうした事故も想像力を働かせれば防げると思います。 最後にもう1点大切なことは、どれだけ正しくチャイルドシートを装着していたとしても助からない事故も存在しています。そう、大人が無謀な運転をしている限り、子どもたちのリスクはゼロにはなりません。飲酒、いねむり、スマホのながら運転、スピード違反など、日々大人たちが軽い気持ちでやっている無謀な行動をなくしていくことが最も大切なことです。 お話・監修/種市尋宙先生 提供・協力/JAF 取材・文/麻生珠恵、ひよこクラブ編集部 種市先生は小児救急が専門で、車の事故で救急搬送されてくる子どもも診ています。「ママ・パパたちは、みんな後悔して自分を責めています。車の事故は、運転に自信があるママ・パパでも防ぐことができません。けしてひとごととは思わないでください」と言います。 監修者 種市尋宙 先生 PROFILE:富山大学附属病院小児科 診療准教授。専門は小児救急・集中治療。とくに子どもの事故予防や感染症危機対応、子どもの命・終末期医療が専門。令和6年消費者支援功労者表彰(内閣府特命担当大臣表彰)を受賞。4人の子育て中。
たまひよ ONLINE編集部