適時開示の「株式持合いの解消」は株価にはプラス材料か?マイナス材料か?
「株式持合い」とは、主に買収防衛を目的として、取引関係等がある企業どうしが相互に株式を持ち合うことであり、これまで多くの日本の上場会社が行ってきました(株式持合いは政策保有、持合株式は政策保有株式と呼ばれることもあります)。しかし、株式持合いは、それを続ける余裕がなくなったことや、持合株式の時価開示の必要性などの要因により、減少傾向にあります。 ここでは、株式持合いの解消が株価に及ぼす影響のうち、短期的な影響、すなわち発表直後に株価がどう変化するのかについて考えてみたいと思います。
新日鐵住金によるポスコ株式の売却が市場に与えた影響は?
新日鐵住金は5月16日、「株式会社ポスコ株式の一部売却について」を開示しました。新日鐵住金は韓国のポスコと株式を持ち合っているのですが、保有するポスコ株式の約3分の1を売却することにしたのです。売却額は、直近の株価で計算すると約300億円になります。 「事業競争力の強化や海外事業拡大等の施策推進に併せて、資産圧縮等による財務体質改善に取組み中であることも踏まえ」、ポスコ株式を売却することにしたとされており、一般の投資家から見ると、どのような効果があるのか分かりにくい株式持合いをやめて(買収防衛が目的ならば、それは経営者の保身であり、マイナスの効果しかないはず)、積極的な投資や財務体質改善に取り組む姿勢がプラスに評価されたのでしょう。 同日の新日鐵住金株式の終値が2199円だったのに対し、翌17日は一時2282円まで値を上げました(安値も2234円)。そして、その後も値を上げ続け、19日には2322円まで値を上げることになりました。 新日鐵住金の株価
同じ株式の売却でも、日医工によるバイネックスの場合は?
日医工は、2015年12月2日、「当社所有株式の売却に伴う資本提携の解消と業務提携の継続に関するお知らせ」を開示しました。新日鐵住金と同じように韓国のバイネックスの株式を保有していたのですが、それをすべて売却することにしたのです。
同3月末時点のバイネックス株式の帳簿価額が61.96億円で、同日に開示した「当社所有株式の売却完了及び特別利益並びに特別損失の計上に関するお知らせ」によると、その売却により37.02億円の特別利益を計上する見込みとのことなので、売却額は約100億円になります。 「今後もバイオシミラー開発への投資が必要であり、ジェネリック医薬品の80%シェア目標達成のための設備投資も目前に迫るなど、資金需要の高まりは極めて旺盛な状況にあることから、このたび、保有資産の効率的な運用を図る観点から」、バイネックス株式を売却することにしたとされており、こちらも新日鐵住金の場合と同様に投資家からプラスに評価されそうです。 しかし、こちらは、確かに値を上げたことは上げたのですが、同日の日医工株式の終値が3200円だったのに対し、翌3日の高値は3240円と、新日鐵住金ほどではありませんでした。新日鐵住金ほど投資家から注目されていない銘柄だからなのか? 売却額が新日鐵住金の場合よりも小さいからなのか? ただし、少し気になるのは、前日1日の終値3080円に対して、同日の高値が3210円だったことです。開示が行われたのは、同日の取引終了後の15時30分だったのですが。 日医工の株価