適時開示の「株式持合いの解消」は株価にはプラス材料か?マイナス材料か?
「三菱総合研究所株式の売出し」は株価にはプラス材料か?
三菱総合研究所は、今年5月30日、「株式の売出しに関するお知らせ」を開示しました。三菱グループで行われている株式持合いを解消する一環として、三菱商事や三菱東京UFJ銀行などが保有する三菱総合研究所株式の売出しを行うというものです。 株式持合いの解消が投資家にプラスに評価されて、株価が上がるかと思いきや、そんなことはなく、同日の三菱総合研究所株式の終値が3660円だったのに対し、翌31日は一時3240円まで値を下げました(高値も3415円)。そして、その後も値を下げ続け、6月16日には2917円まで値を下げることになりました。 これは、株式の売出しにより流通する株式の数が増加して、供給が需要を上回るという状態が生じることになるためです。株式持合いの解消は投資家にプラスに評価されるとしても、株式の売出しによる株価低下を抑えることはさすがに難しいようです。 なお、新日鐵住金の開示では、ポスコが保有する新日鐵住金株式の売却については未定とされていますが、今後売却されることになった場合は、新日鐵住金の株価にマイナスの影響が及ぶかもしれません。 三菱総合研究所の株価
「買収防衛策の廃止」は株価には好材料か?
株式持合いの継続が難しくなってくるなか導入されるようになったのが買収防衛策です。しかし、その買収防衛策も、株式持合いと同様、投資家の評判が悪く、最近は減少傾向にあります。「敵対的」買収への防衛策だというのですが、誰にとって「敵対的」かといえば、株主にとってではなく、あくまで経営者にとってだからです。 今年に入ってから買収防衛策の廃止に関する開示を行った会社は、本稿執筆時点(7月29日)において14社です。社名をあげると、オエノンホールディングス(2月25日開示)、ACCESS(3月15日開示)、リックコーポレーション(4月8日開示)、いちよし証券(4月19日開示)、日本ペイントホールディングス(4月28日開示)、オリンパス(5月2日開示)、エイジス(5月10日開示)、古川電気工業(5月11日開示)、広島ガス(5月11日開示)、日本新薬(5月12日開示)、日本精鉱(5月13日開示)、近鉄グループホールディングス(5月13日開示)、日本コロムビア(5月17日開示)、アイホン(5月24日開示)、となります。 買収防衛策の廃止は、投資家からプラスに評価されるはずです。したがって、株価にもプラスの影響を及ぼすように思われます。しかし、上にあげた会社の開示後の株価を確認したところ、特にプラスの影響を見てとることはできませんでした。 株式持合いの解消や買収防衛策の廃止は、確かに投資家からプラスに評価されるはずです。しかし、単にそれだけで株価にプラスの影響が及ぶことは、少なくとも短期的にはないようです。 (事業創造大学院大学准教授 鈴木広樹)