対話と体験通じ、未来社会を見つめる サイエンスアゴラ2024閉幕
アゴラは科学界と一般社会が交流し、知的好奇心を深めてより良い社会を目指す「科学コミュニケーション」の重要なイベントだ。それだけにこの分野をめぐり、国内外の登壇者の意見が関心を集めた。「科学者がソーシャルメディアや講演、イベントなどを通じ市民に直接、情報を伝える機会がますます増えている」「人々は科学コミュニケーションや情報の質に不満を言う一方、良質な記事を読むためにお金を払いたがらないという矛盾がある」といった状況認識が示された。 さらに「日本では新聞の購読者が多いのに、新聞の科学ニュースの扱いが小さい。科学雑誌の休刊も続いた。研究広報の人材が圧倒的に少ない。科学コミュニケーションの重要性の認識や、執筆の教育が足りない」「科学コミュニケーションの質を高めるには情報が正確であるだけではなく、文脈や聴衆を意識し、考え方を押し付けず会話を刺激する専門的なスキルが必要だ」など、厳しい指摘も相次いだ。
科学者からは仕事の難しさと魅力が、口々に語られた。「学校の授業では仮説通りの結果が得られるが、研究では思った通りの結果にならない。実験が間違っているのか、仮定が違うのか。考えることの繰り返しだが、それが楽しい」「自分で課題を見つけられるようになると楽しくなり、とても夢がある」「大変なことも多いが、解析している間に(研究対象の真の姿を)自分だけが知っていると思うと、とても興奮する」「競争もあるが、世界の研究者と一緒に活動するのが楽しい」。一連の言葉は進路を考える若者に限らず、多くの人の心に響いたのではないか。
研究者を目指すかどうか迷う人に向けて「理系に対する苦手意識のバイアスを取り払って」「数学が苦手だから理系ではないといった考え方は、おかしいのでは」「自分のやりたいことに制約をかけずに取り組んでほしい」などとエールが飛び交った。
恐竜、展覧会…VRとAIが目を引いたブース
ブースでは研究機関や学校、企業などの出展者により、実験や観察、社会課題をめぐる意見交換などの体験企画、ワークショップが多数、実現した。今年は特に、仮想現実(VR)やAIの技術を活用したものが光った。恐竜の化石をVRで観察する福井県立大学などによる企画は、親子で楽しむ姿が絶えなかった。画像生成AIによる絵を鑑賞し、各人が自由に解釈しながら未来の科学技術を考える立教大学の企画は一見、展覧会のようで、多くの人を引き込んでいた。