理工系の4割は大学院進学、気になる学費は? 「大学院は保護者が“行かせる”ところではない」
大学卒業後の選択肢の一つが大学院への進学です。卒業生全体でみると、大学院に進むのは1割程度ですが、理工系学部に限定すると約4割が進学しています。では、大学院の学費は、どのくらい必要なのでしょうか。理工系の学部に入学する場合は、大学院の学費も準備しておいたほうがいいのでしょうか。駿台予備学校で長く入試情報部門の責任者を務めてきた石原賢一さんが解説します。 【写真】「国立大は今後も値上げが続出する」 私立文系でも学部で20万円以上の差、各大学の授業料を比較すると…
文部科学省の「令和5年度学校基本調査」によると、学部ごとの大学院進学率は、文学部などの人文科学は4.1%、法・政治・商学部などの社会科学は2.6%です。一方、理学部は44.0%、工学部は38.4%で、文系と理系で大きな違いがあることがわかります。農学部も26.3%で比較的、大学院進学率が高くなっています。 大学院は、修士課程(博士課程前期)と博士課程(博士課程後期)に分かれ、原則として修士課程は2年間、博士課程は3年間で修了となります。それぞれ修了すると「修士」「博士」の学位が授与されます。 進学先は、在籍する大学の大学院に進学するケースもあれば、別の大学院に進むケースもあります。学校基本調査で大学院入学者に占める自大学出身者の割合をみると、人文科学は約55%、社会科学は約29%なのに対して、理学と農学は約82%、工学は約88%です。つまり、理・工・農学部は、学部の研究室の延長に大学院での研究があると言えます。進学率が高いのも、大学での学びや研究を継続し、さらに深く突き詰めたいといった思いがあるからです。 また、理工系学部の大学院進学率が高い理由として大きいのが、大学院修了後の就職状況です。石原さんはこう話します。 「理工系だと大学院修了後に技術者や研究者として専門的な職業につくことが多く、就職する上でも大学院で学んだことが有利になる傾向があります。一方、文系の場合、大手シンクタンクで経済学の修士、博士が採用されることもありますが、それ以外の事務業務では、大学院を修了しているメリットが少なく、逆に敬遠されることがあるのも実情ではないでしょうか」